無線通信は空間という媒体を電波が伝搬することによって実現されます。この空間や電波は、人類 共有の財産であり、電波の性質を表す周波数は限りある資源です。現在は、携帯電話やWi-Fiのような 数多くの無線通信システムが普及したことにより、周波数資源は枯渇しつつあります。そこで、異なる無線 通信システムが同じ周波数を共用するシナリオを考え、システム間で生じる電波干渉(同一チャネル干渉) を除去するための信号処理技術について研究をしています。主なアプローチとして、
・複数のアンテナから送受信される信号を制御する適応アルゴリズム
・伝搬路の状態を効率的に推定するための信号処理
などの観点から研究を行います。
通常の無線通信は、固定的に設置された基地局と、ユーザ端末が通信を行うことで成立していました。 近年では、周波数資源の枯渇の問題から、より高い周波数(ミリ波など)へと移行が進んでいます。 周波数が高くなるにつれ、通信距離は狭まる特性があり、従来の固定設置では通信エリアを確保でき ない領域が生じてしまいます。そこで、基地局が自律的に移動することでユーザの通信需要を適切に 満たす無線ネットワークの構築を目指すのが本テーマです。基地局に限らず、ユーザ端末同士が中継に よる通信を行うことでもエリアの拡大を図ることができます。具体的には、
・基地局の移動アルゴリズム
・端末間どうしの効率的な接続を実現するための通信・制御手法
などの研究を行います。
本研究テーマは、従来の電波ではない媒体として、光ファイバや可視光、音波を用いた通信を対象に、 無線通信技術の応用を図ります。光や可視光、音は伝搬の性質が異なることから、これまでに確立され てきた無線通信技術の単なる応用が困難であり、それぞれの通信環境に適した工夫が必要です。 見方を変えれば、それら光などの性質を利用した新たな通信方式を創出できる可能性も秘めています。 研究としては、
・光カメラ通信などのアプリケーションに特化した変復調技術
・適応アルゴリズム、干渉除去技術の応用による大容量化
などについて模索しながら進めていきます。手法として機械学習の応用なども行います。