変位電流がどのような役割を果たしているかを考えるために次のような例を考えてみる。[Ref(1)p324 problem7.32]
定常電流Iが図のようにコンデンサーに流れ込んで、コンデンサーに一様に電荷が分布しているとする。この場合のコンデンサーのプレート間の磁場を求める。(ただし、コンデンサーのプレート間の距離wはコンデンサーのプレートの半径aに比べて十分に小さい。)
(A)
Ampere-Maxwellの法則を積分形で表すと
であるから、図のように半径sのAmperian loopを考えると、真電流はこの面を通らないので変位電流の項のみが残り
となる。
ここでまず、コンデンサーのプレート間の電場Eを求めることにする。
電荷は一様に分布するので、コンデンサーの全電荷量Q(t)と面電荷密度σ(t)の関係は
となる。以上をふまえて積分計算を実行すると、
今度はAmperian loopは同じままであるが、下図のように面を取ってみると
(B)
変位電流の項は電場と面が直交するためゼロとなり、真電流の項のみが生き残る。
そこで、コンデンサーのプレート上を放射状に伝わる電流i(補足:放射状の電流について)が存在することに注意して計算すると、
見ての通り両者の答えは一致する。
さて、これは何を意味するのであろうか?
同様の答えが出るにもかかわらず、一方は変位電流を必要とし、一方は変位電流を必要としない。
これでは、変位電流という概念をここで持ち出すことにも疑問を持ってしまうかもしれない。
変位電流とは一体何なのであろうか?磁場のsourceなのであろうか?本当に必要なのであろうか?