東京理科大学創域理工学部機械航空宇宙工学科 小笠原研究室

誰もが宇宙に行ける世界を目指して

 遠くない未来、一般人が日常的に宇宙と地表を往復したり、海外旅行の移動時間が劇的に短縮される日がやってきます。実現の鍵はマッハ10を超える極超音速を飛行可能な完全再使用宇宙輸送機です。現在運用されているロケットのほどんどは使い切り式です。スペースシャトルはオービターや固体補助ロケットなど部分的に再使用可能な宇宙輸送システムでしたが、「再使用に向けた整備に多額のコストがかかること」などを理由に2011年に運用を終了しました。
 本研究室では誰もが宇宙にいける世界を目指して、「極超音速飛行中の空力加熱」、「強い衝撃波同士の干渉など高速流れ特有の問題」、「完全再使用宇宙輸送機の機体形態や飛行方式の研究」など、高速空気力学とそれに対応する航空宇宙機システムに関する研究を進めます。

研究内容

極超音速数値流体解析

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 完全再使用型宇宙輸送システムの検討にあたり、実際の機体が受ける空気力や大気からの入熱を把握することは肝要です。しかしながら宇宙機が実際に飛行する極超音速から超音速の領域における飛行実験を頻繁に行うことは困難です。そのため数値流体解析を用いたシミュレーションにより飛行条件や実機条件を再現することで研究を行っています。
 本研究室では、スキップ・グライド軌道において胴体/翼下面からのガス噴射による空力干渉を活用し飛行レンジ延伸を試みる研究や、宇宙機の再突入時の熱問題に関する研究に数値流体解析を利用しています。また機体周りのみでなく、吸い込み式超音速風洞の改良や小型低速風洞の性能向上を図る改修設計に至るまで、様々な解析を行い研究に活かしています。

[研究テーマ例]
・超音速流れとジェット噴流干渉の活用
・超音速飛行体の空力加熱低減に関する解析的研究

完全再使用宇宙輸送システム

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 現在運用されているロケットのほとんどは使い捨て式であり、打上コスト低減は解決が難しい課題の一つとなっています。さらに使い捨て式では機体製造の観点から、拡大する打上需要に対応しきれない可能性や宇宙デブリの増加など様々な懸念点が挙げられます。
 本研究室では打上コスト低減かつ再使用可能な完全再使用宇宙輸送機に関する研究を進めています。ミッション要求に対応したロケットサイジングをスタートポイントとして打上からペイロードを軌道投入するまでの上昇経路について検討します。また分離後の加速段を回収するために必要な飛行経路や飛行方法についても検討を行い、回収・再使用実現に向けた研究を進めます。

[研究テーマ例]
・再突入時の跳弾飛行による飛行レンジ延伸
・有翼ロケットの重量推定法の検討と機体設計
・1段ロケット帰還飛行に関する研究
・リフティングボディ形状を用いた宇宙機の形状最適化

風洞実験

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 本研究室では吸込み式超音速風洞及び小型低速風洞を保有しており、現在は両風洞ともに研究への本格適用に向けた気流特性把握や性能向上を目指し改修中です。改修完了後、これらの風洞を用いた風洞実験を行っていきます。

[研究テーマ例]
・吸込み式超音速風洞の検定と実験装置立ち上げ
・5孔ピトー管を用いたエアデータシステムの検討

吸込み式超音速風洞通風試験の様子




※大きい音が出ます。ご注意ください。

上段ロケット再使用化(共同研究)

USuM

 現在運用中の使い切りロケットでは既に一部のロケットの1段ロケットにおいて回収・再使用が実現していますが、衛星を投入軌道へ運搬する上段ロケットでは未だ実現されていません。
 本研究室では世界初となる上段ロケットの回収・再使用を目指し、三菱重工業(株)と共同で研究を進めています。衛星打上げミッション終了後の上段ロケットは内蔵された「伸展式上段耐熱装備USuM(Upper stage Survial Mechanism)」で空力加熱に耐えて帰還する構想で、この機構は本研究室で特許申請したものです。
 上段ロケット再使用化には空力加熱に限らず多くの研究テーマがあり、「単段式完全再使用宇宙輸送機」の実現に向けた第一ステップとして研究を進めています。

[研究テーマ例]
・再突入飛行体のパラフォイル回収システム誘導性能評価

単段式完全再使用宇宙輸送システム(共同研究)

ISC

 ヒト・モノを宇宙へ運搬する手段である宇宙輸送システムは多段式であり、単段式は未だ実現されていません。
 本研究室では単段式かつ再使用可能な宇宙輸送システム(Single-Stage-to-Orbit, SSTO)の実現を目指し、将来宇宙輸送システム(株)と共同で研究を進めています。