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「水界面」研究とは

我々の日常生活において身近な「水」は、様々に形を変えて、物質・材料の表面に普遍的に存在しており、ときにはその構造や機能の発現を支え、ときには予期せぬ悪影響を与えることが知られています。この水が物質との複雑な相互作用を示す「水界面」では、物質の原子・分子スケールの物理化学状態や、ナノ・マイクロスケールの形状などと水が密接に関わり合いながら、その挙動を支配しており、吸着・濡れ・流れという形で巨視的に現れてきます。この階層的な相互作用は単一の理論では解明できず、そのために水界面の振る舞いの予測や制御は極めて重要となります。ウォーターフロンティア研究センター(WaTUS)では、この「水界面」における最先端の学術研究の推進と社会へ貢献するイノベーションの創出を目指します。

本拠点独自技術の紹介

水界面統合シミュレータ
水界面統合シミュレータ

私たちは、物質表面・界面の水の運動と構造に関する数値シミュレーション解析を、計算科学を専門としない利用者であっても容易、かつ一元的に実行できる水統合シミュレータを開発しています。本シミュレータは、グラフェン、シリカ、窒化ホウ素等の固体基板表面に水分子を配置、分子動力学計算を実行し、その計算結果から水の密度分布、水素結合ネットワーク、パーシステントホモロジー、接触角など、他の解析ソフトウエアでは扱われていない様々な物理量を解析・算出することまでを可能としています。また、分子動力学計算で得られた界面近傍の水分子に対して、その振動スペクトルを算出する量子力学計算に、および分子動力学計算で算出された溶液の接触角、粘性、界面張力を流体力学計算に受け渡すインターフェースの拡張も準備されています。これらの操作はすべて独自GUIで操作可能であり、解析結果もグラフィカルに表示されます。ミクロな分子のレベルからマクロな流体までの広いスケールの水を解析対象としていることが本シミュレータの特徴です。

詳細、及び利用方法についてはこちら

ヘテロダイン和周波発装置
ヘテロダイン和周波発装置

本研究センターでは、水の存在する材料表面や摺動界面において発現する物性や機能の起源を、ナノメートルスケールの水の構造から明らかにすることを目的としています。本装置は、表界面近傍の水を選択的かつ高感度に検出しその振動スペクトルを得ることのできる、ヘテロダイン検出振動和周波発生分光(HD-VSFG)計測装置です。HD-VSFG計測では材料表面に対する吸着分子の配向を実験的に直接決定可能であり、振動数情報と併せて利用することで、表面構造を詳細に解析することができます。本装置は出力パルス光のスペクトル幅が400 cm-1以上と広いため、広いスペクトル領域を一度に取得できるマルチプレックス計測が可能です。

型式 Astrella-USP-1K/OPerA Solo System(COHERENT社製)
設置場所 神楽坂校舎1号館5階0501室

雰囲気制御走査型プローブ顕微鏡
雰囲気制御走査型プローブ顕微鏡

走査型プローブ顕微鏡法は物質・材料表面の構造・形態をナノメートルオーダーでイメージングする強力な測定手段です。さらに、本研究センターの中心課題である材料表面の水の果たす役割を総合的に解明するには、材料が使用される実環境下、すなわち、温度や湿度を実際の動作環境と同じ状態に保持し、材料表面の水吸着層を維持した状態での計測が不可欠です。雰囲気制御走査型プローブ顕微鏡は、温湿度の制御を通じて材料表面の水吸着を制御した状態で原子間力や摩擦力の測定を行うことができるので、材料表面特性に及ぼす水の影響を多面的に評価できます。

型式 SPM-9700HT/WET SPM(島津製作所社製)
設置場所 神楽坂校舎1号館5階0501室

界面蛍光顕微鏡
界面蛍光顕微鏡

界面蛍光顕微鏡法は、通常の蛍光顕微鏡のようにサンプル全体に励起光を照射せずに、エバネッセント光と呼ばれる局在非伝搬光を照明光として用いることで、物質・材料表面近傍100 nm程度における高SN比での蛍光観察が可能な顕微鏡です。本装置を用いることで、物質表面近傍での流れ計測や1分子観察などが可能となり、物質・材料表面と流体や分子の相互作用を評価することができます。
励起光源として、波長405 nm、488nm、561nm、640 nmのレーザを搭載しており、通常の落射式蛍光顕微観察との併用も可能なため、バルクと表面近傍での挙動の比較・評価にも対応することができます。

型式 ECRIPSE Ti-2U/LAPP EPI + TIRF(ニコン製)
設置場所 葛飾キャンパス研究棟4階元祐研究室

環境制御接触角計
環境制御接触角計

接触角測定は材料に滴下した液体と材料とのなす角を調べる手法であり、材料表面のマクロな濡れ性を評価する代表的な測定法の一つです。本装置は材料表面を地面と平行に保って測定する通常の接触角(静的接触角)だけでなく、試料を徐々に傾けていった時に液体が転がり始める傾き角(転落角)、またその時の接触角(前進接触角および後退接触角)まで、ほぼ全自動で測定することができます。さらに試料室の温度と湿度を制御した測定が可能で、実際の使用環境を模した測定や、大気から材料表面への水吸着が濡れ性に及ぼす影響の解析に対応できます。

型式 Drop Shape Analyzer (DSA) 25 (KRUSS製)
設置場所 神楽坂校舎1号館5階0501室

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