研究活動(Research)

研究概要

当研究室は衛生薬学の分野の1つである環境健康学の研究室です。
衛生薬学は,薬物治療を研究の直接の目的とせず,「疾病予防と健康増進」を目指す薬学ですが,私たちもそのような立場から環境と健康の接点を分子レベルで解明する研究を行っています。
私たちの研究は,金属の血管毒性の解明,動脈硬化病変進展にかかわるプロテオグリカンの合成調節,および新しい研究戦略バイオオルガノメタリクス(有機金属化合物・錯体分子のバイオロジー)を3本の柱としています。

伝統的金属毒性学研究(MeHg, Cd,Pb)

水俣病(メチル水銀中毒)では,大脳の脳溝周辺組織と小脳顆粒細胞層が選択的に強く傷害されます。しかし,その発症メカニズムは未だ解明されていません。動物実験から大脳皮質障害の特異性については,脳浮腫形成が関与している可能性(浮腫説)が提唱されています。一方,小脳障害については,組織の炎症性変化が関与している可能性(炎症仮説)が,我々の研究グループにより提唱されています.研究室では,脳構成細胞へのメチル水銀毒性発現の解明を通じて,「浮腫仮説」と「炎症仮説」の分子基盤の解明に取り組んでいます。また,今年度からは,メチル水銀以外の毒性金属としてカドミウムの血管毒性発現メカニズムの分子基盤の解明にも挑戦しています。

バイオオルガノメタリクス

「バイオオルガノメタリクス」とは,有機金属化合物・錯体分子のバイオロジーのことです。当研究では,有機金属化合物・錯体分子の持つ優れた特性を活かし,これらの分子によって生体分子・生体システムの活性を制御する研究や,金属の持つ活性を標的分子・標的組織で特異的に発現させる研究などを通じて,生命科学研究に新しい領域と技術を創り出し,世界に発信していくことを目的として,勢力的に研究を展開していきます。これまでに,内皮細胞の機能制御において重要な役割を担っているプロテオグリカン分子種のパールカンの合成を誘導する有機アンチモン化合物PMTASを見出しました。現在,研究室では,銅,亜鉛など種々の有機金属化合物についても研究を展開しています。

プロテオグリカン研究

プロテオグリカンは,コアタンパク質にグリコサミノグリカンが共有結合した分子であり,細胞表面と細胞外マトリックスの主要構成成分です。プロテオグリカンは,細胞外マトリックスの分子と結合し,これらの分子の機能を調節することにより細胞形態およびその機能を調節しています。また,動脈硬化の発症・進展に関することなどから,プロオグリカンは種々の病変の進展における鍵分子として注目されてます。研究室では,血管細胞プロテオグリカンの合成調節の動脈硬化発症と進展のメカニズムとその予防について研究を行っていきます。

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