• 2001年度の講義


    この年はたくさん講義をした。コマ数も例年より一つ多いが、 はじめて担当した科目や、内容を新しくした科目があって、準備に時間がかかった。
    • 前期 この学期は線形代数を急遽余分に持つことになって、火曜日に三コマが集中 することになってしまった。春先からずっと体調が悪く、風邪がなかなかな おらなかったのもあって、この火曜日はかなりきつかった。 もう少し体力をつけようと決意した次第。

      • 微分積分学第一 講義概要
        二回目の微積分担当。一回目よりはずっと余裕ができたが、それでも教える内容が 多くて、忙しい。「ここで時間をとって問題演習をすれば理解が深まるのに」と思う ことが何度もあったが、これをやると終わらなくなってしまう。数学演習の時間での 演習を期待するしかない。しかしながら、試験をみると一部の人をのぞいては 問題演習の不足が非常に目立つ結果となってしまった。教官に余裕があれば、 講義と演習の双方を担当するのがよいのだが、それは現状では不可能。 なかなか悩み深い科目だ。
      • 応用代数学 講義概要
        はじめてのシステム工学科の専門科目の担当であった。学生の興味を考えて、 有限体の理論とその応用ということではじめたが、前半の素体のところはともかく、 有限体上の多項式を考えて、拡大体を構成していくところになると脱落者多数。 講義の準備も時間をかけて、わかりやすいように教えたつもりだが、 うまくいかないものだ。 素体だけでやれることをやれば良かったのかな。しかしそうすると、 現代数学入門IIとの差があまりなくなってしまうしなぁ。 単位を最終的にとった人も半分ぐらいと低調だった。ただ、良く理解している人が 3人ぐらいいたのが、少し救い。
      • 函数論 (夜間主コース)
        講義概要
        函数論ははじめての担当。他の人が使っている教科書をそのまま指定したが、 これは選択ミスだった。良くまとまっていて、良い本だと思うが、 夜間主コース用には内容が多すぎる(もともと通年の講義用に 書かれた教科書だと裳華房の編集者に聞いた)。はじめての年だったので、 書いてあること(等角写像のところは除いて)すべてやったら、全く休講なしでも最後は 大急ぎになってしまった。微積分も不確かな学生が見受けられたので、やさしい宿題を ほぼ毎回出した。「どういう勉強をすれば良いかがわかる」とおおむね好評だったが、 「忙しくてできない」という学生もいた。でもね数学って、時間をかけて自分で手を 動かさないとできるようにはならないのね。ということで、勉強の時間のとれない人は 数学の単位はあきらめたほうが良いと思う。夜間主の学生は熱心な学生と不熱心な 学生の差が非常に大きかった。熱心な学生が良く講義を聴き、質問もしてくれた おかげでこの講義は他の講義より充実していたのではないかと思う。
      • 線形代数学第一 講義概要
        線形代数は久しぶりの担当。特に第二は97年に担当して以来。線形代数は演習時間を 講義中にさくだけの余裕があって、教えやすい。第二は内容豊富だが、それでも 微積ほどではない。やはり演習を入れられる講義とそうでない講義は試験のできも ずいぶん違ってくる。ただこの年の担当だった F 学科は質問も少なく活気がなかった。 特に後期は数学演習が必修でないので、それに出ていない学生はどんどんできなく なっていった気がする。過年度生の単位取得率はこの講義では例外的によかった。
    • 後期
      • 線形代数学第二 講義概要
        後期の期末試験は線形代数でははじめて教科書、ノート持ち込み可にしてみた。 成績自体はそれほど変わらない気がする。だいたい試験の時間に教科書やノートを 読みはじめているようじゃだめ。試験前にそれは注意したのに、やっぱり教科書の ページをまくるのに忙しい人がいる。持ち込み不可にすれば、この人たちも少なくとも 自宅で少しは勉強するであろうから、そのほうが良いのかとも思うが、線形代数の 後期はおぼえることも多くて、記憶の酷使は良くないので、迷うところだ。 今後の課題。

        休講が何度かあったので、補講をした。

        微積分とか、線形代数はもうそろそろ第三をつくって、一年半をかけて 教えることにしないと、難しくなってきたかもしれない。そうすれば、 線形代数では、固有値問題も 教えることができるし、微積の問題演習もできるだろう。

      • 現代数学入門 II 講義概要
        結局教科書は和田先生の「計算数学」とハーディー・ライトの「数論I」を 併用することにした。学生には講義に出てノートを理解すれば教科書は必要なし といったが、学生の活字になったものへの信仰は強く、結局どちらかの本を 購入したようだった。内容もシラバスとは一致しなかった。暗号の話を おりまぜながら、原始根の存在までをやったあとは、素数判定やフェルマー数といった 話題を取り上げた。最後は連分数をやってペル方程式の解法まで。連分数は いろいろな計算ができるので、学生にとっても群や体よりは 身近なものを扱っているという感じがしたのではないかと思う。 この科目はいつも講義に出てくるのが40人ほどで、意欲のある学生も多くて 教えやすかった。
      • 情報数理第一 (大学院) 講義概要
        昨年度までの代数的数論をやめて、この年は基本的な数論アルゴリズムを 講義することにした。幸にして、この講義はレベル設定も適切だったようで、 学生の理解もレポートを見ている限りではとても良かった。 ただ、指定したブーフマンの教科書の翻訳は最悪で、 訳者が内容を理解せずにただ日本語に置き換えただけのひどい誤訳がたくさんある。 このまえ本屋で第2刷をながめたが残念ながら全然なおっていない。ブーフマンの本 自体はとても良い本だと思うので、なおさら残念である。 買った学生には申し訳ないことをしてしまった。

        この講義でレポートを二回とも遅れて出したM2の学生にわたくしは単位を 出さなかった。レポートの提出期限の厳守を確認しているのにも関わらず、それを 軽視するのは許しがたいし、そういう学生が社会に出ても良いことはないと 信じたからである。数学ができるとか、できないとか以前の問題である。


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