東京理科大学 応用生物科学科 倉持研究室

研究紹介Research

研究内容

 化学的手法によって生命現象を解明するケミカルバイオロジーは世界中で急速に発展しています。これはひとえに、生命の諸現象を分子レベルで解明することが生命科学の進歩ひいては人類の健康増進に不可欠と考えられ、生命科学の基盤としての化学の重要性がこれまで以上に認識されるようになったために他なりません。私たちの研究室では、自分で合成した化合物を、生命現象を解明するための道具に利用し、生命の諸現象を分子レベルで明らかにすることを目指します。

研究内容

研究テーマ

1.天然物の化学と生物(Chemistry and Biology of Natural Products)

 生物活性を有する天然有機化合物(通称:天然物)に関する研究が近年さらに注目されるようになっています。私たちの研究室では、天然物の化学合成(chemistry)から作用機能解析(biology)までの一連の研究を行います。さらには天然物をリード化合物とした医薬・農薬・診断薬の開発を目指します。

2.アフィニティービーズの化学と生物(Chemistry and Biology of Affinity Beads)

 医薬品の多くは特定のタンパク質と結合し、その機能を亢進もしくは阻害することで作用を発揮します。そのため医薬品と相互作用するタンパク質を究明することは、医薬品の作用や副作用を解明するために有用な手段となります。先行研究で私たちは医薬品の結合タンパク質を効率的に回収するアフィニティービーズを開発しております。これからは、アフィニティービーズの表面を独自の分子設計で化学修飾を施し(chemistry)、より高い機能を持つアフィニティービーズを開発します(biology)。

3.がん関連ユビキチン化酵素の化学と生物学(Chemistry and Biology of Ubiquitin Ligases Associated with Cancer)

 私たちの研究室では、inhibitor of apoptosis proteins(IAPs)と総称されるがん関連ユビキチン化酵素に焦点を当て、そのユビキチン化活性を利用した任意のタンパク質へのユビキチン化誘導手法の研究を行っています。また、IAPsはがんの増悪因子であり、生体分子がIAPsの機能を抑えるメカニズムの解明や、IAPsを標的とした新たな抗がん剤の創製を目指した研究を行っています。

4.希少疾患の予防・治療・診断に関する研究(Research on Rare Disease)

 患者数が非常に少ない疾患を一般に希少疾患と呼びます。希少疾患に関しては、予防・治療・診断に関する基礎研究が遅れています。特に、患者数が少なく開発費の回収が見込めないために、企業による診断・治療法の開発が進んでおりません。1.希少疾患の早期診断・早期治療を実現して患者さんの健康増進に繋がる成果を残したい、2.患者さんの治療の選択肢を増やしたい、という思いから希少疾患に関する研究をスタートしました。全くの手探りの状態ですが、副腎がん(50~100万人あたり約1人が罹患)やアルカプトン尿症(25万~100万人あたり約1人が罹患)に関する研究を開始しました。

5.ニホンライチョウに関する研究(Research on Japanese Rock Ptarmigan)

 ニホンライチョウは絶滅危惧種であり、国の特別天然記念物に指定されています。我々はニホンライチョウの餌となる植物成分の研究を通じ、人工飼育や人工繁殖に役立つ知見を得たいと考えております。(大阪府立大学・松林先生、中部大学・牛田先生、土田先生、東邦大学・長谷川先生・小林先生との共同研究)

6.新型コロナウイルスや肝炎ウイルスなどに対する抗ウイルス薬の開発(Development of Antiviral agents)

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)などの増殖を抑制する化合物の合成と作用機構などに関する研究を行っています。化合物によって宿主細胞の遺伝子を巧みに制御し、細胞内でウイルスが増殖しにくくさせます。(国立感染症研究所の渡士幸一先生との共同研究)

7.宇宙での植物栽培と成分解析

 宇宙食の開発を行っています。植物工場などを利用し、千葉県野田市の名産大豆を宇宙で栽培することを目標にしています。(先端化学科・酒井秀樹先生との共同研究)

8.コウノトリの簡易健康診断法の開発

 千葉県野田市「こうのとりの里」、鴻巣市コウノトリ野生復帰センター「天空の里」、井の頭自然文化園、小山市と共に、コウノトリの簡易健康診断法の開発を行っています。コウノトリも絶滅危惧種であり、国の特別天然記念物に指定されています。(古山先生・鈴木智順先生・古屋俊樹先生との共同研究)

9.皮膚常在菌に関する研究

 皮膚常在菌がどのようなメカニズムで形成されているかを研究しています。(古山先生のテーマ)

10.カビと細菌との相互作用解析

 イネいもち病菌と放線菌との相互作用を解析しています。(古山先生のテーマ)

研究・教育指導

 学生が、卒業後、研究の第一線で活躍できるように確かな知識と技術を指導します。論文作成やプレゼンテーションもしっかりと指導し、一流の研究者へと育てます。以下に最近の指導実績を示します。

○ 特別研究員

  • 日本学術振興会特別研究員(DC1)2016年

○ 指導学生の受賞

  • 日本薬学会第66年会関東支部大会 優秀発表賞(ポスター発表)(2021年4月)詳細はこちら
  • 日本薬学会第141年会 学生優秀発表賞(ポスター発表の部)(2021年4月)詳細はこちら
  • Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(BBB)論文賞(2021年4月)詳細はこちら
  • 日本農芸化学関東支部2018年度支部大会 優秀発表賞(ポスター発表部門)(2018年10月)詳細はこちら
  • 日本化学会 第98春季年会 学生講演賞(2018年4月)詳細はこちら
  • 第 36 回有機合成若手セミナー 優秀研究発表賞(2016年8月)
  • 日本薬学会第136大会(横浜)学生優秀発表者賞(口頭発表の部)(2016年3月)
  • Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(BBB)論文賞(2016年3月)
  • 京都4大学連携フォーラム 最優秀発表賞(2015年 12 月)
  • 複素環化学討論会 優秀口頭発表賞(2015 年 11 月)
  • 農薬デザイン研究会 優秀発表賞(2015年 10 月)
  • 日本農芸化学会 関西支部 賛助企業特別賞(2015年 4 月)
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