✔ 【2017年3月】HfTe3で共存する超伝導と電荷密度波
電荷密度波(Charge Density Wave, CDW)を形成した際にはフェルミ面にギャップが出現するため、一般的に超伝導とCDWは互いに共存しません。 ZrTe3は図1に示すようにb軸方向に一次元鎖を有し、q = (1/14, 0, 1/3)のネスティングベクトルを有するCDWがT* = 63 Kで実現することが知られています。 さらに、Tc = 2 Kで超伝導転移するため超伝導とCDWの関係性について興味深い物性を示すことから盛んに研究がなされています。

我々はZrを同族元素であるHfに変えたHfTe3の多結晶試料においてCDWと超伝導が同時に発現していることを発見しました。 この物質は合成可能な温度領域が非常に狭いために最適な条件で合成を行わないと単相を得るのは困難です。 図1はHfTe3のリートベルト解析の結果であり、この結果から純良な単相試料の合成に成功したと判断できます。
図2は電気抵抗率の温度依存性を表しており、82 Kで電気抵抗の増大が確認されCDWが生じていると考えられます。 さらに1.5 Kで電気抵抗が急激に上昇し、ゼロになることが確認できるため、この温度で超伝導転移していることが分かります。 またこの試料は空気に非常に敏感であり、数十秒程度で試料が大きく劣化してしまいます。 試料を空気暴露の時間を変化させた後に電気抵抗率の温度依存性を測定した結果、時間経過に伴い電気抵抗率の温度依存性が急激に上昇しました。 この結果から大気暴露は試料に悪影響を及ぼすため、不活性ガス下(Arなど)での取り扱いが必須です。

この研究成果は新たなTrTe3のCDWと超伝導が関連する新たな物質の発見は、遷移金属カルゴゲナイド系化合物におけるCDWと超伝導の関連性を解明するために重要な情報を与えると考えています。 またZrTe3はCDWを様々な方法で抑えることで、超伝導転移温度を上昇させることが可能であるため、HfTe3も今後の発展が大きく期待できる物質です。
本研究をまとめた論文は、Natureの姉妹誌であるScientific Reports誌に掲載されました。
論文情報
"Coexistence of superconductivity and charge-density wave in the quasi-one-dimensional material HfTe3"
S. J. Denholme, A. Yukawa, K. Tsumura, M. Nagao, R. Tamura, S. Watauchi, I. Tanaka, H. Takayanagi, and N. Miyakawa
Scientific Report 7, (2017) 45217 (preprint: arXiv:1711.10628)