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  ✔ 【2019年4月】 InGaZnO4の大型単結晶の育成とその輸送特性

In、Ga、Zn、Oで構成される透明酸化物半導体はIGZOと呼ばれ、高精細フラットパネルやフレキシブル基板TFT材料として実用化されています。 この化合物の研究はアモルファス・薄膜試料では精力的に行われているが、その一方で基礎物性を理解するために必要不可欠である単結晶試料の報告がほとんどなく、その詳細な物性は明らかではありません。 またZnの蒸気圧が低いために高温での結晶育成が難しく、IGZO自体にも液相が存在しないと考えられていました。

図1、FZ法で育成したInGaZnO4の単結晶ロッド

そのような背景の中、我々は9気圧もの高圧雰囲気下におけるFlooding Zone (FZ)法を用いて、InGaZnO4 (IGZO-11)の大型単結晶の育成に初めて成功しました(図1)。 また、9気圧の高大気圧のみでは純良な結晶は得られず、育成時に蒸発するZnを補償するためにその量を若干増やす必要がありました。 このどちらが欠けても純良な単結晶育成は不可能であり、この両者が大型単結晶育成に不可欠であることを見出しました。

育成に成功した単結晶試料は青みがあり、これは酸素欠損によるキャリアドープが原因だと考えられます。 この青色は酸素雰囲気下でアニール処理をすることで透明化させることが可能でした。

図2、InGaZnO4の酸素アニール前後の単結晶

物性の解明のために、育成したIGZO-11単結晶の電気伝導度、移動度、キャリア密度の温度依存性を測定しました。 酸素雰囲気下でのアニールにより電気的特性を制御可能であり、アニール処理によって室温でのキャリア濃度と導電率が1017〜1020 cm-3及び1~2000 S cm-1の範囲内で制御できました。 単結晶のc軸(面間)に沿った導電率が、ab面(面内)の導電率よりもかなり小さく、異方性はキャリア密度の減少と共に増加することを明らかにしました。

本研究によって、InGaZnO4の大型単結晶の育成に成功しその育成手法を確立することに成功しました。さらにその基礎物性を明らかにすることに成功しました。 また我々が開発したこの育成手法によって、ホモロガス構造を持つIn-Ga-Zn-O系化合物の系統的な結晶育成とその物性解明が可能であるため、この系の飛躍的な発展につながると期待しています。

本研究をまとめた論文はCryst. Eng. Comm誌に掲載され、"Back Cover"および"Hot Article"に選出されるという非常に高い評価を受けています。


東京理科大学プレスリリース
東京理科大学研究戦略・産学連携センター


論文情報
"Single crystal growth of bulk InGaZnO4 and analysis of its intrinsic transport properties"
Y. Tanaka, K. Wada, Y. Kobayashi, T. Fujii, S. J. Denholme, R. Sekine, N. Kase, N. Kimizuka, N. Miyakawa
Cryst. Eng. Comm. 21, (2019) 2985-2993
*** Selected as "Back Cover" and "Hot Article" ***

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