◆◆◆ 最新の研究成果 / Recent Topics ◆◆◆<

  ✔ 【2019年9月】 Ce3+/Ce4+の価数揺動を用いたNdOBiS2の新超伝導体の発見

硫化ビスマス系化合物超伝導体は2012年に発見されてから、様々な超伝導体が発見され多くの研究がなされています。 この系の超伝導体はフッ素などを置換した電子キャリアの注入によって超伝導が発現することが知られています。 近年、Ce3+/Ce4+の価数揺動によって生じる価数のズレを用いた電子ドープ(La1-xCexOBiS2など)を用いても超伝導が発現することが報告されました。 そこで我々は、NdOBiS2にCeを置換することでCe3+/Ce4+の価数揺動を用いた電子キャリア注入による超伝導の発現を試みました。

図1は直流磁化率の温度依存性であり、この結果から大きな反磁性が観測されていることから、バルクの超伝導が発現していることが分かり、新たな超伝導体を発見することに成功しました。 ab軸方向とc軸方向で反磁性の大きさが大きく異なり、c軸方向で大きな反磁性が出ているのは試料の形状効果が原因です。

図1、Nd1-xCexOBiS2の直流磁化率の温度依存性。

電気抵抗率の温度依存性は、Ce置換量が増えるごとに増大します。 Ce置換によりキャリアーが増えるのであればこの現象は逆であり、Ce置換によるキャリアドープの影響は単純でないことがわかります。 そこで我々は室温においてゼーベック効果を測定することで、簡易的にこの系のキャリアがどのように変化しているかを調べました。 ゼーベック効果の値はCe置換量がx = 0.2のときが最も小さくx = 0.5まで増大しこのときに最大の値を示します。 これを理解するためには、Ceの価数は置換に対して常に一定ではなくCe3+とCe4+の価数の割合が、置換に量によって変化していると仮定する必要があります。 xが小さい場合はCe4+の割合は多く、xが大きくなるにつれてCe4+の割合が減少すると考えれば説明ができます。

本研究により、Ce3+/Ce4+の価数揺動を用いた電子キャリア注入によって、NdOBiS2をバルクの超伝導化させることに成功しました。 この実験の一部は、東京大学物性研究所の共同利用設備を用いて行いました。

本研究をまとめた論文はJ. Phys. Soc. Jpn.誌に掲載されました。


論文情報
Superconductivity of electron-doped NdOBiS2 by substitution of the mixed valence Ce ions
N. Kase, M. Matsumoto, K. Kondo, J. Gouchi, Y. Uwatoko, T. Sakakibara, and N. Miyakawa
J. Phys. Soc. Jpn. 88, (2019) 103703. (preprint: arXiv:1909.01710v1)




Recent Topics 一覧へ