宇宙を「観る」眼を創り、
宇宙の「真理」を解き明かす。

01. 天体物理学:宇宙望遠鏡で解き明かす極限の物理

本研究室では、XRISM や IXPE といった最新鋭の宇宙X線衛星が捉えた観測データを用い、ブラックホールや中性子星、さらには数億光年彼方の銀河団といった、数千万度から数億度に達する超高温、地球の数兆倍にも及ぶ超強磁場、光さえ脱出できない超強重力が支配する「極限環境」に潜む物理を探究しています。
解析対象は、天体の空間分布(画像)、エネルギースペクトル、時間変動、さらにはX線偏光に至るまで多次元にわたります。これらを統合的に解析し、放射輸送や粒子加速過程の理論モデルと精密に照合す ることで、天体周囲の高温プラズマの構造、速度場、エネルギー輸送・加熱機構を定量的に描き出します。
観測量から目に見えない物理状態を逆問題として再構成するこの知的プロセスこそが本研究室の中核です。観測データを読み解く視点と、それを生み出す装置への理解を併せ持つことが、本研究室の大きな特 色です。そして、その物理描像の解像度と信頼性を根底から支えているのが、自ら設計・評価を行う最先端のイメージングセンサー開発です。
ブラックホール・中性子星のダイナミクス

超巨大重力場を高速で回転する「降着円盤」、それを取り巻く「超高温コロナ」、そして光速に近い速度で噴き出す「アウトフロー」。最新鋭のXRISM衛星IXPE衛星を通じ、人類が未だ到達していない宇宙の動的な姿を解明しています。

108-109テスラの超強磁場を持つ中性子星でも、伴星からの質量降着やアウトフローの存在がXRISMの観測によって次々と明らかになりつつあります。

ブラックホールイメージ
ブラックホール(はくちょう座X-1)の降着円盤とジェット
銀河団:宇宙最大規模の衝突と進化

数億度の超高温プラズマで満たされた銀河団は、数十億年をかけて衝突・合体を繰り返しながら成長しています。私たちは衝突時に発生する「非平衡プラズマ」をSuzakuXRISMで発見することで、宇宙最大規模の構造進化の描像を確固たるものにしようとしています。

直近では、ペルセウス座銀河団におけるガス運動の複数の駆動要因を解明した成果が「Nature」誌に掲載されるなど、国際的なトップランナーとして研究を推進しています。

衝突銀河団
衝突銀河団:10億年規模の進化をX線で捉える

02. イメージングセンサー開発:世界最高の「眼」を創る

本研究室では、宇宙観測の精度を決定づける「目」そのものを創出するため、半導体イメージングセンサーの研究開発を推進しています。現在運用中のXRISM衛星に搭載されたX線CCD(SXI)の開発に携わるとともに、次世代X線SOIピクセル検出器「XRPIX」の高性能化を進めています。
これらの検出器では、低雑音化、分光性能の向上、大面積化、さらには宇宙放射線環境下での耐久性向上といった複数の性能要求を同時に満たすことが求められます。そのため本研究室では、半導体中の電荷生成・輸送過程や放射線損傷の物理を基礎から理解し、観測性能を物理的原理に立ち返って向上させる研究に取り組んでいます。
さらに、その技術基盤は、有人宇宙探査における放射線計測や、核医学分野における高精度イメージングへと展開しています。宇宙の深淵を覗く「目」を磨き、その技術を社会へと接続していくこと、それが本研究室のものづくりの哲学です。
天体観測技術をベースにした「デュアル開発」

天体観測で培った超高性能技術を、社会の最前線へ応用。基礎科学から実応用までを横断する開発スタイルです。

有人宇宙探査:月面活動域での放射線モニター (RiCheS)
次世代核医学:薬剤動態の可視化、治療効果の診断
20年以上の実績と「サイエンスの品質保証」

「Suzaku」から「XRISM」に至るまでJAXA、MIT、浜松ホトニクス等と共同開発を主導。高エネルギー加速器研究機構(KEK)SPring-8での性能評価を主導しました。

打ち上げ後も軌道上の実データを用いて性能をモニター。地上の開発から携わっている私たちだからこそできる評価結果を全世界へ公表し、科学データの品質保証に貢献しています。

XRISM搭載CCD
XRISM衛星搭載 X線CCD「Xtend」
2030年代への挑戦:SOI技術の革新

日本初のSOI技術を採用したCMOSセンサーを開発。10年をかけ、実用サイズ(2cm×3cm)へと進化させました。分光性能は従来比で5倍以上改善しています。

放射線耐性においては、軌道上400年相当の運用でも劣化しないことを実証。この耐久性は、有人探査用モニター「RiCheS」への活用も進んでいます。

SOI-CMOS
日本初のSOI技術を採用したCMOSセンサー
核医学分野では、東大、F-REI等と連携。理科大内の生命医科学研究所にて、マウスを用いた薬物の高精度位置決定試験を重ね、宇宙技術を医療の未来へと還元しています。
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