はじめに

試料採取地点

2009年度より,安全安心な社会を実現するための高度な科学捜査力の強化の一環として大型放射光施設「SPring-8」の放射光を活用すべく,本格的な犯罪捜査用の土砂データベース「JRS-DBJapanese River Sediments Database - Heavy Element and Heavy Mineral Maps of Japan)」の構築を開始した。 右図1に示す3,024カ所の河川堆積物試料について,SPring-8の全自動放射光粉末X線回折測定システム(SR-XRD:BL19B2で実施)により重鉱物組成を求め,高エネルギー蛍光X線分析(HE-SR-XRF:BL08Wで実施)により重元素組成を求めた。 そして採取地点の位置情報をもとに,日本地図上に重鉱物と重元素の分布をそれぞれ重鉱物マップと重元素マップとして表した。 これらの2種類のデータを複合的に解析することによって,未知の土砂試料がどの地域のものか推定することができ,土砂を証拠資料とする科学捜査で活躍する。 2016年の3月で全データの測定と解析が終了したことから,データベースとして公開することとなった。 今後,法科学応用では検索ソフトを開発することで,迅速に産地推定ができる体制を構築する計画である。 今回は重鉱物・重元素マップのみの公開であるが,今後は元データである各試料の粉末X線回折データおよび蛍光X線スペクトルも順次公開していく。 なお,データベースの開発についての詳細は総合論文を,具体的活用方法・応用事例については各地域についてのデータベース開発論文を参照されたい。 また重鉱物マップ利用にあたって注意されたいことは,用いられている鉱物名は分類学上厳密な鉱物種の名前を指すものではなく,粉末X線回折法で容易に同定できる「角閃石」「ガーネット」などの通称であり,組成的特徴は加味されてないことをご理解願いたい。

本データの複製・利用は自由であるが,利用する場合は必ず指定の文献(和文の場合英文の場合)を引用されたい。 終わりに,本データベースの開発は,多くの方々の多大な協力のもとに進められた。 良質の測定データを収集できるように努力されたJASRIのスタッフの方々,膨大がデータの測定,解析を行ってくれた理科大の学生諸君の貢献が特に大きい。 ここに,関係各位への深い謝意を表すとともに,本データベースが有効に活用されることを祈念する。

2016年4月
東京理科大学 理学部第一部 応用化学科
中井 泉