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東京理科大学教養教育研究院 中丸研究室

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趣意(2014年~2020年)


こちらの趣意は、当プロジェクトの過去の研究に関するものです。現在の研究については、 趣意をご覧ください。

沿革

「プロジェクト人魚」は、アンデルセン『人魚姫』を共通テクストとした、各国語文学の研究者による共同研究プロジェクトとして、2011年12月に発足しました。

本プロジェクトの特色は、日本文学、英米文学、フランス文学、ドイツ文学など、言語や国家を単位として行われてきた従来の文学研究とは対照的に、異なる言語を対象とする文学者が共同で研究を行う点、その中に北欧語というマイナー言語文学が含まれている点にあります。各メンバーに共通する関心事として、それぞれの研究との関連が見えにくい抽象的なテーマではなく、『人魚姫』という具体的なテクストを選びました。

研究会を開いてそれぞれの研究内容を知る過程で、全員が、視覚効果やプレゼンテーションのやり方など、専門研究の成果の「伝え方」に強い関心を抱いているという共通項が新たに見えてきました。その具体的な実践の場として、教養教育(リベラル・アーツ)に着目し、専門研究の成果を教養教育に直接還元するモデルを提示することを、到達目標の一つに定めました。

2013年度から、「世界文学としてのアンデルセン『人魚姫』の超領域的研究と教養教育への応用モデル」というテーマで、日本学術振興会より、科学研究費助成金・基盤研究(C)の助成を受けて活動しています。現在は、年に3回の研究会を中心に、論文集と教科書の刊行を目指して、各自が学会発表や論文の執筆を行っています。過去の研究会の資料や概要は、「これまでの研究会」からご覧いただけます。

アンデルセン『人魚姫』

プロジェクト人魚では、4つの理由から、『人魚姫』を共通テクストとして選択しました。
1.モチーフの普遍性:人魚は、あらゆる時代・地域の文学や芸術作品に登場します。異なる言語の文学・文化間で、様々な視点からの比較が可能です。
2.マイナー言語作品:『人魚姫』は、デンマーク語で書かれています。デンマーク語は、母語話者数が550万人程度のマイナー言語ですが、『人魚姫』は、180か国語以上に翻訳され、「世界文学」となっています。この作品を中心軸にすることで、従来のメジャー言語中心の文学研究からの視座の転換を図ります。
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3.テーマの複合性:『人魚姫』は、身体(脚部障碍、半人半獣、声、痛み、血)・自然(太陽、海、空気)など作品モチーフ、社会・歴史(階級差、マイノリティ、制度)など作品背景、翻訳・受容・教育など研究方法において、様々な観点・分野で多角的に論じることのできるテクストです。
4.教養教育への適合性:絵本や映画などで一般に広く知られ、手ごろな分量(日本語完訳版が約20ページ)で、平易な文章で書かれています。受講者の関心にあったアプローチから、多様な解釈をすることが可能です。

超領域的研究

プロジェクト人魚では、『人魚姫』に包含される諸テーマを、異なる言語の文学研究者が緩やかに共有し、さまざまな視点から『人魚姫』を読み、その視点を各メンバーが自身の専門研究に反映します。 メンバーはいずれも、各言語文学の分野において、作家論・受容論・メディア論・表象文化論など様々な研究方法で業績を上げてきました。当プロジェクトにおいては、『人魚姫』と関連する複数のテーマのうちから各自の専門と関わるテーマをいくつか選択し、そのテーマを他のメンバーと共有しながら研究を進めます。各メンバーの個人研究と、当プロジェクトでの役割については、「メンバー紹介」をご覧ください。 purport-2.png

教養教育

大学教育では、従来、専門的な研究の成果が還元されるのは、同分野の研究者や専門学生、大学院生など、限定的な対象でした。しかし、近年、教養課程の学生を含む幅広い学生や社会人への研究成果のフィードバックが求められています。

プロジェクト人魚では、メンバーがそれぞれの研究成果を、所属大学の授業や市民セミナーにリアルタイムに盛り込みます。一般の学生や社会人に対しては、作品とその伝記的・社会的・文学的背景を紹介する入門的な授業を行い、文学を専門とする学生や文学部進学予定者、大学院生に対しては、文学研究の方法論を自覚させる授業を行います。その実践を通じて、有効な教材、映像資料の活用方法など、教育に有用な情報を蓄積し、研究成果を教養教育(リベラル・アーツ)に直接的に反映するモデルを提示します。