これまでの研究会
「第〇回研究会」という文字をクリックすると概要・要旨が開きます。日付の横にタイトルがある回は公開研究会です。
〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3 Tel:03-5228-8160(研究室直通) Email:nakamart〔at〕rs.tus.ac.jp 〔at〕を@にかえてお送りください
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日時:2023年10月16日(月)19:00~22:00
場所:Zoom
発表:中丸禎子(タイトル:後日掲載)
司会:中丸禎子
日時:2023年9月30日(土)13:00~17:10
開催形態:オンライン(Zoomによる遠隔)
日時:2023年7月23日(日)16:00~19:00
場所:Zoom
発表:平藤喜久子「多神教の諸相」
司会:中丸禎子
日時:2023年4月29日(土)09:00~12:00
場所:【ハイブリッド開催】
発表:中園成生「日本におけるキリスト教受容の振幅」
司会:中丸禎子
日時:2023年3月30日(金)13:00~16:00
場所:Zoom
発表:赤江達也「内村鑑三と塚本虎二はなぜ分離したのか」
司会:中丸禎子
日時:2023年3月28日(水)13:00~16:00
場所:Zoom
発表:ペーターセン エスベン「内村鑑三、レオ・トルストイと日露戦争」
司会:中丸禎子
日時:2023年3月8日(火)18:00~20:00
場所:Zoom
(対面)東京理科大学神楽坂キャンパス
(オンライン)Zoom
書評対象:マーガレット・ウィルソン『アイスランド 海の女の人類学』向井和美訳、青土社、2022(解説:松本涼)
講評:塩田潤
司会:高橋美野梨
趣旨説明・開会挨拶:中丸禎子
閉会挨拶:松本涼
告知文:
マーガレット・ウィルソン『アイスランド 海の女の人類学』(訳:向井和美、解説:松本涼、青土社、2022)の書評会を開催します。
アイスランドでは長きにわたって、多くの女性が、漁師や船乗りとして海で働いて生活をしてきました。しかし、その歴史は現在のアイスランドでは忘れられ、あるいは認識されていませんでした。本書は、アメリカ人の著者が、女性船長スリーズル・エイナルスドッティル(1777-1863)の冬の漁師小屋の再現を偶然訪れたことを機に、「海の女」の記録と記憶を資料と証言から書き起こしたものです。アイスランドや北欧、ジェンダー、生活史などに興味のある方をはじめ、様々なご興味の方とディスカッションをしたいと考えています。
日時:2023年2月25日(土)14:00~17:30
場所:【ハイブリッド開催】
(対面)東京理科大学神楽坂キャンパス
(オンライン)Zoom
発表1:伊山智基「多声性の国際政治―北極評議会と北極海会議の比較分析―」
司会・コメンテーター:高橋美野梨
発表2:塘内彩月「トーベ・ヤンソン《岩礁小説》における石の様相―触れえないものに触れるメディウムとして」
司会・コメンテーター:中丸禎子
※2つの卒業論文他の資料を「文献・リンク集」内「学位論文発表会資料」に掲載しました。
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JPEG 表面 裏面 表裏一面
日時:2023年1月7日(土)16:00~19:00
場所:Zoom
発表:渡部和隆「内村鑑三におけるキリスト教思想と社会分析の交差」
司会:中丸禎子
日時:2022年10月28日(金)10:00~12:30
場所:Zoom
発表:中丸禎子「セドナ×人魚姫:女性人魚の系譜研究の批判的考察」
司会:高橋美野梨
研究課題「人間と自然の交流の位相をどのように捉えるか:キリスト教、世俗/近代、イヌイット社会」(代表:高橋美野梨/スカンジナビア・ニッポン ササカワ財団助成金)と共同開催
日時:2022年9月15日(木)13:00~18:30
場所:【ハイブリッド開催】
(対面)東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館15階 共同研究室(2)
(オンライン)Zoom
発表:加藤敦子「近世演劇の「キリシタン」とその背景」
発表:兼岡理恵「W.グンデルトの日本研究ーその特色・日本文学研究の視座から」
司会:中丸禎子
日時:2022年9月3日(水)13:00~16:00
場所:Zoom
発表:田渕宗孝「グロントヴィの捉え方~ナショナリズム論を参考に~」
司会:中丸禎子
日時:2022年3月30日(水)13:00~16:00
場所:Zoom
発表:中丸禎子「スウェーデンの近代化と宗教運動 セルマ・ラーゲルレーヴ『エルサレム』『ニルスのふしぎな旅』」
司会:中丸禎子
日時:2022年3月25日(金)13:00~16:00
場所:Zoom
発表:田中琢三「モーリス・バレスとジャンヌ・ダルク」
司会:中丸禎子
日時:2022年1月22日(土)13:00~16:00
場所:Zoom
発表:中丸禎子「国民高等学校(フォルケホイスコーレ)、満蒙開拓、『デンマルク国の話』――加藤完治、賀川豊彦、内村鑑三のデンマーク受容」
司会:中丸禎子
日時:2021年12月25日(土)13:00~15:00
場所:Zoom
出版企画執筆候補者顔合わせ
日時:2021年8月31日(火)13:00~15:00
場所:Zoom
今後の研究計画について打ち合わせ
日時:2021年8月6日(金)17:00~20:00
場所:Zoom
評者 小澤純
ゲスト 細馬宏通
司会 中丸禎子
プログラム
16:50〜 Zoom接続開始
17:00〜 ご挨拶・趣旨説明 中丸禎子
17:10〜 講評 小澤純
18:00〜 執筆者・細馬宏通との質疑応答
18:30〜 全体討議
評者プロフィールはこちら
日時:2021年8月3日(金)13:00~15:00
場所:Zoom
今後の研究計画について打ち合わせ
日時:2021年7月3日(土)13:00-18:00
場所:Zoom・一般公開(視聴無料・要申し込み)
司会:田中琢三(お茶の水女子大学)
プログラム
12:50頃 Zoom開室
13:00 挨拶 神田由築(お茶の水女子大学・部門長)
13:05 挨拶 小林誠(お茶の水女子大学・グローバルリーダーシップ研究所長)
13:10 趣旨説明 田中琢三(お茶の水女子大学)
13:15 基調講演 ペーターセン エスベン(南山大学)「近代日本における新神学とそのパラドクス」
14:15 休憩
14:25 研究発表① 加藤敦子(都留文科大学「近世演劇における「キリシタン」と日本意識」
14:55 研究発表② 田中琢三「内村鑑三『デンマルク国の話』における信仰・農業・愛国主義」
15:25 休憩
15:30 研究発表③ 中丸禎子(東京理科大学)「国民高等学校(フォルケホイスコーレ)と満蒙開拓 加藤完治と賀川豊彦のデンマーク受容」
16:00 研究発表④ 兼岡理恵(千葉大学)「W.グンデルトの日本学 —キリスト教から神道、そして文学—」
16:30 休憩
16:45 パネルディスカッション・講評
17:45 閉会の辞 田中琢三
概要
本シンポジウムは、明治・大正期における北欧・ドイツと日本の文化交流を、おもにキリスト教とナショナリズムという観点から検討することを目標とする。この交流において重要な役割を果たした人物のひとりが内村鑑三(1861-1930)である。内村の『デンマルク国の話』(1911)は植樹に成功し国力を回復させた理想の国としてデンマークを紹介し、我が国に北欧のポジティヴなイメージを流布させることになった。他方で、この思想家が著した『余は如何にして基督信徒となりし乎(原題:How I Became a Christian)』(1895)は、ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)の従弟にあたるヴィルヘルム・グンデルト(1880-1971)が翻訳したドイツ語版を契機にヨーロッパ諸国で読まれることになる。またグンデルトは、東京帝国大学独文科のお雇い外国人教師でもあったハンブルク大学の教授カール・フローレンツ(1865-1939)のもとで博士論文「日本の能における神道」を執筆し、フローレンツの後継者としてドイツにおける日本学の第一人者となった。「キリスト愛国」を唱えた内村の北欧・ドイツにおける受容や、宣教師で後にナチ党員となるグンデルトの日本との関わり、あるいはそれらの周辺の文学を探りながら、近代日本におけるキリスト教の受容のあり方と、信仰や伝道と密接に結びついたナショナリズムの展開を、我が国と北欧・ドイツの関係という国際的な視座から再考したい。
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日時:2021年6月18日(金)13:00~15:00
場所:Zoom
発表者・タイトル:ペーターセン エスベン(南山大学)「German Liberal Christianity and Religion in Modern Japan」
日時:2021年6月11日(金)13:00~15:00
場所:Zoom
発表者・タイトル:中丸禎子「国民高等学校と満蒙開拓 研究の背景と展望」
日時:2021年6月4日(金)13:00~15:00
場所:Zoom
発表者・タイトル:兼岡理恵「グンデルトの日本研究 お茶の水女子大学国際シンポジウムに向けて」
日時:2021年3月30日(火) 10:00~13:00
場所:Zoom
発表者・タイトル:田中琢三「内村鑑三『デンマルク国の話』におけるキリスト教と愛国主義―フランス文学との比較を通して―」
日時:2021年3月2日(火) 13:00~16:00
場所:Zoom
発表者・タイトル:加藤敦子「「キリシタン」のイメージ生成とメディアとしての仮名草紙」
日時:2021年1月29日(金)19:30~21:30/2月20日(土)14:00~16:00
※同内容の講演会を2回開催。
場所:Zoom(一般公開)
講演者・タイトル:中丸禎子「『高畑勲をよむ』をつくる~企画・執筆・編集 5年間の記録」(『高畑勲をよむ』第二刷刊行記念講演会)
開催概要:プロジェクト人魚第44回研究会
講演記録:講演記録「『高畑勲をよむ』をつくる~企画・執筆・編集 5年間の記録」
日時:2021年1月27日(水) 10:00~11:40
場所:Zoom
2021年度研究会に関する打ち合わせ
日時:2020年12月23日(水) 13:00~16:00
場所:Zoom
2021年度研究会に関する打ち合わせ
日時:2020年11月25日(水) 13:00~16:00
場所:Zoom(一般公開)
発表者・タイトル:中丸禎子「香川鉄蔵とイシガオサム 無教会の北欧受容」
プログラム・発表要旨:プロジェクト人魚第41回研究会
日時:2020年10月31日(土) 14:30~17:30
場所:Zoom(一般公開)
発表者・タイトル:田中琢三「ダレーの「血と土」イデオロギーの諸相と日本における受容」
プログラム・発表要旨:プロジェクト人魚第40回研究会
日時:2020年10月3日(土) 14:30~17:30
場所:Zoom
2021年度研究会に関する打ち合わせ。
日時:2020年6月27日(土) 15:00~18:30
場所:Zoom
プログラム、評者プロフィールはこちら
日時:2020年6月19日(土) 14:00~17:00
場所:Zoom
2020年の研究計画と2021年度以降の研究計画に関する打ち合わせ。コロナ禍によるプロジェクト人魚の対面研究会中止とそれにかかる対応、学会の中止による研究計画の変更・出張の中止に伴う予算の補正について。
日時:2020年5月12日(火) 16:30~19:00
場所:Zoom
第1回オンライン合評会打ち合わせ
日時:2020年3月12日(土) 15:00~17:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
2020年の研究成果報告と2021年度以降の研究計画に関する打ち合わせ
日時:2018年9月20日(金) 9:40~13:45
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
9:40~10:40 田中琢三「モーリス・バレスにおける「大地と死者」のナショナリズムの生成」
10:45~10:35 中丸禎子「ヴィルヘルム・グンデルトへの関心とその背景」
11:40~12:30 兼岡理恵「ハンブルク大学研究滞在報告」
12:45~13:45 2019年度科研費に関する打ち合わせ
日時:2019年6月1日(土) 15:00~17:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
15:00~15:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
15:30~17:00 発表(1)細馬宏通(早稲田大学)「火垂るの墓 —ショットから捉え直す—」
日時:2018年9月20日(金) 14:00~17:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
14:00~15:00 『高畑論集』(仮)編集会議
15:00~17:30 『高畑論集』(仮)第6回口頭発表会
15:00~15:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
15:30~17:00 発表(1)兼岡理恵(プロジェクト人魚/千葉大学)「高畑勲の「方法」―四コマ漫画『ののちゃん』から長編映画『ホーホケキョ となりの山田くん』へ―」
<発表要旨>
兼岡理恵「『ホーホケキョ となりの山田くん』における間(ま)」
『ホーホケキョ となりの山田くん』(以下、『山田くん』)は、シンプルな線、水彩画タッチの絵柄、背景を極力省略した画面構成など、「削ぎ落とされた」表現によって、きわめて現実的な「日常」を描いた作品である。また作品中では俳句が用いられているが、俳句もまた、日本の短詩形の中でも最も「削ぎ落とされた」表現形式である。一方、原作である、いしいひさいち『となりの山田くん』『ののちゃん』は、時に「オチがわかりにくい」とも評され、四コマの「外」にあるものを想像する必要がある。すなわち受容者の「主体性」が求められる作品とも言える。これは高畑作品の特徴とも共通するが、『山田くん』では、いしいの原作に新たな「オチ(展開)」を与え、映画『山田くん』の世界を構築している。
本稿では『山田くん』における自然・景物描写や、言葉(台詞と台詞の「間」、俳句による表現性)の分析、また、いしいの原作との比較等を通じ、『山田くん』の「削ぎ落とされた」表現性から生み出された作品世界について考察する。
日時:2018年4月27日(金) 18:30~20:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
18:30~20:00 『高畑論集』(仮)編集会議
20:00~20:30 2019年度科研費に関する打ち合わせ
日時:2018年3月13日(火) 13:00~17:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
13:00~15:00 編集会議
15:00~15:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
15:30~17:40 発表(1)井上征剛(山梨英和大学)「放送劇音楽としての『母をたずねて三千里』付随音楽」」
<発表要旨>
井上征剛「放送劇音楽としての『母をたずねて三千里』付随音楽」
本研究では、テレビアニメーションシリーズ『母をたずねて三千里』の音楽(坂田晃一)を、音楽表現およびシリーズ全体を通しての構造に着目して分析する。本作品では、音楽は、舞台となっている土地、すなわちイタリアおよびアルゼンチンの民謡を思わせる音楽が主人公の心情と厳密に結びつけられ、各場面の描写を主導していることに、ひとつの特徴がある。しかし、とくに注目すべき点として、シリーズ序盤の印象的な場面で用いられた音楽が、長い中断を経て最終盤で再び用いられる、というような手法によって、音楽がシリーズ全体の構造を伝える役割を果たしていることが挙げられる。背景に流れる、物語の隙間を埋める、あるいは各場面の雰囲気を伝えるといったことにとどまらず、1年間・52回という長いサイクルで組み立てられた、いわば放送劇音楽として明確な機能を与えられたのが、『母をたずねて三千里』の音楽である。
日時:2017年9月16日(土) 13:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
13:00~13:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
13:20~14:40 発表(1)加藤敦子(プロジェクト人魚/都留文科大学)「日本文化に継承される狸の表象――『平成狸合戦ぽんぽこ』を手がかりとして」
15:00~16:20 発表(2)鈴木彰(立教大学)「〈いくさの庭〉と戦場のあわい――『平家物語』という窓から――」
16:30~17:50 発表(3)西岡亜紀(プロジェクト人魚/立命館大学)「『かぐや姫の物語』における時間の表象――記憶をテーマとした20世紀小説との接点――」
<発表要旨>
加藤敦子(プロジェクト人魚/都留文科大学)「日本文化に継承される狸の表象-『平成狸合戦ぽんぽこ』を手がかりとして-」
徳島には天保年間(1830~1844)に起きた狸の大戦争の民話が伝わる。この物語に材を得た映画『阿波狸合戦』(1939)の大ヒットは、一方で『続阿波狸合戦』(1940)、『阿波狸屋敷』(1952)など言わば「狸合戦物」を生み、一方で歌と踊りを盛り込んだ『狸御殿』(1939)、『歌ふ狸御殿』(1942)、『花くらべ狸御殿』(1949)など「狸御殿物」の作品群を生んだ。『平成狸合戦ぽんぽこ』はこれら作品の系譜上に位置づけることができる。
本稿では、近世以前の狸の表象を踏まえて、狸合戦物、狸御殿物など狸に関わる物語を通覧し、日本文化が狸の表象として継承するもの、狸に仮託するものを考察する。
鈴木彰(立教大学)「〈いくさの庭〉と戦場のあわい――『平家物語』という窓から――」
今日、『平家物語』は軍記物語というジャンルに属し、当該作品群を代表する物語とみなされている。武士たちが戦場で活躍する物語として、あるいはそうした場面のみを選んでこれを読み、語り継いできた歴史が、現在に至るまで確かに存在する。
ただし、『平家物語』は戦場の様子や武士の姿だけを描いているわけではなく、武士たちの価値観がその物語世界を覆い尽くしているわけでもない。作中では、個人や集団をさまざまに焦点化することで戦場のさまが描写されるが、それらは生身の武士たちとは一定の距離を置いた立場からなされたものと考えられる。
こうした状況を見渡しつつ、『平家物語』という文学が描いたいくさ・戦場の質をあらためて多角的に検討してみたい。ここでは、〈いくさの庭〉という考えかたに注目し、いくさを描いたいくつかの物語にも目を配りながら、ささやかな中間報告を試みる。それはおのずと、高畑氏のインタビューにおける『平家物語』への言及の質を受け止めることにもつながるだろう。
西岡亜紀(プロジェクト人魚/立命館大学)「『かぐや姫の物語』における時間の表象――記憶をテーマとした20世紀小説との接点――」
本稿は、『かぐや姫の物語』の時間構造の分析を出発点として、『かぐや姫の物語』と20世紀小説との接点を探る試みである。『かぐや姫の物語』には、姫が幼年期を過ごした里山への郷愁、月にいたときの唄の再生や人物をめぐる記憶の語り、中盤の疾走場面や終盤の捨丸との飛翔の場面など、複線的・重層的な時間の出現が確認できる。これは時系列に添った単線的な時間のもとに進む『竹取物語』との大きな相違点である。複線的な時間が作中人物の現在の描写にどのような意味を持たせているのかを考察し、そこに記憶をテーマとした20世紀小説との接点を探る。
日時:2017年8月27日(日) 13:30~16:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
13:30~16:00 編集会議
日時:2017年3月28日(火) 11:00~13:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
11:00~11:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
11:20~13:00 発表(1)田中琢三(プロジェクト人魚/お茶の水女子大学)「高畑勲とフランス」
<発表要旨>
田中琢三(プロジェクト人魚/お茶の水女子大学)「高畑勲とフランス」
高畑勲氏を語るうえでフランスの影響を無視することはできない。高畑氏は東京大学文学部仏文科の出身であり、彼がアニメーションの世界に入る直接のきっかけとなったのはフランスのアニメ映画『やぶにらみの暴君』に衝撃を受けたことであった。また、ジャック・プレヴェールの詩の翻訳やミシェル・オスロ監督作品の字幕を担当するなど、高度なフランス語能力を活かした仕事を行っている。本論考では高畑氏とフランス、特にフランスの文学および映画との関わりを検討しながら、彼の作品においてフランス的なものがどのように取り入れられているのかを考察する。
日時:2017年3月4日(土) 13:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
13:00~13:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
13:20~14:40 発表(1)ちばかおり(日本ハイジ児童文学研究会)「『母をたずねて三千里』演出論~マルコはハイジと夢をみる~」
15:00~16:20 発表(2)中野貴文(東京女子大学)「走る女と忘れられた帝」
16:30~17:50 発表(3)佐藤宗子(千葉大学)「ブックガイドから見た「世界」の「文学」――無着成恭の選定と岩波・福音館の児童書――」
<発表要旨>
ちばかおり(日本ハイジ児童文学研究会)「『母をたずねて三千里』演出論~マルコはハイジと夢をみる~」
イタリアの愛国心高揚のために書かれた『クオレ』を、アニメ化するにあたりどう描いたか。マルコ少年の苦悩を徹底的にリアルに描きつつ、丸みのある温かな絵とじっくりと丁寧に描かれる生活空間により、ヒステリックさをとことん排除したドラマになっている手法は、絶妙なバランスを保ちながら、『クオレ』を普遍性を持つ人間ドラマへと昇華させた。この『三千里』は『アルプスの少女ハイジ』のスタッフが次回作として手がけた作品である。共通点を挙げていくと、両作品は、実は互いに陰と陽の関係であったのではとも考察される。詩人であり、社会主義者で気骨の脚本家、深沢一夫と、徹底的なリアリズムに立つ高畑氏の出会いが生み出した傑作を検証する。
中野貴文(東京女子大学)「走る女と忘れられた帝」
高畑勲『かぐや姫の物語』と原作『竹取物語』との比較を通じて、前者の世界観を明らかにする。比較においては、原作と異なり、かぐや姫がしばしば作品世界を疾走(基本的に、古典文学登場人物は一切走らない)することの意味、及び原作では丁寧に叙述されていた、かぐや姫の帝への親近感(嫌悪から慕情への過程)が描かれることなく、むしろ帝が徹底的に戯画化されていること、昇天後の帝と富士山のシーンが全て削除されていることの意味を論じる。さらに、原作においては明示されなかったかぐや姫の「罪」と「罰」について、高畑がいかなる方向性を打ち出したのか検討する。その際、劇中に繰り返される歌の記憶が考察の鍵となるだろう。
佐藤宗子(千葉大学)「ブックガイドから見た「世界」の「文学」――無着成恭の選定と岩波・福音館の児童書――」
第二次大戦後の1950―60年代は、「少年少女」読者層の新たな出現とあいまって、「読書」による「教養形成」を期する動きが児童文学界に兆した。創元社「世界少年少女文学全集」のような世界の「地域割り」による叢書、「岩波少年文庫」のような遂次刊行されていく叢書などを企画・出版する立場の発信者側が「何を読書させようとしたか」のみならず、対象読者に該当の書籍を手渡す媒介者――就中、媒介の指針となる発信も行うような媒介者――が、実際にどのような書籍を推奨したかを把握することは、この時期の「教養形成」のありようを解明する重要な手掛かりとなりうる。
今回は、無着成恭著『子どもの本220選』(福音館書店、1964年。ただし使用するのは同年の第3刷)をとりあげ、4歳から中学3年生までの読者を対象として選定された220点の全体を概観した後、とくに選ばれた「岩波少年文庫」がどのような書目であるかに着目する。「岩波少年少女文学全集」の「解説」執筆の点で、岩波書店の児童書とも縁のある無着の選定を通じて、当時の「少年少女」向けの「図書」と「文学」と「教養」の関係を、追究していくこととしたい。それを通じて、「現代児童文学」出発以降、「児童文学」の世界における「無意識の前提」としての「文学」観を、再考する契機も生まれうるだろう。
日時:2016年9月13日(火) 15:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
15:00~16:20 インタビュー
ゲスト:小田部羊一(『アルプスの少女ハイジ』キャラクター・デザイン)
中島順三(『アルプスの少女ハイジ』プロデューサー)
インタビュアー:兼岡理恵(千葉大学)、田中琢三(お茶の水女子大学)
司会:中丸禎子(東京理科大学)
16:40~17:40 座談会
インタビューを踏まえ、フロアーからの質疑応答を交えたディスカッション
司会:田中琢三
日時:2016年9月13日(火) 13:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館16階共同研究室(3)
13:00~13:20 中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)『高畑論集』(仮)趣旨
13:20~14:40 発表(1)中丸禎子「赤毛と靴とストッキング――『長くつ下のピッピ』と<世界の名作>」
15:00~16:20 発表(2)川島隆(プロジェクト人魚/京都大学)「ドイツに《逆輸入》された『アルプスの少女ハイジ』」
16:30~17:50 発表(3)縄田雄二(中央大学)「幻燈劇としてのゲーテ『ファウスト』再考」
<発表要旨>
中丸禎子(プロジェクト人魚/東京理科大学)「赤毛と靴とストッキング――『長くつ下のピッピ』と<世界の名作>」
1971年、高畑勲氏は、アニメ『長くつ下のピッピ』演出を依頼され、宮崎駿氏、小田部羊一氏とともに東映動画からAプロダクションに移籍した。この企画は、原作者リンドグレーンの許可が下りずに中止されるが、設定の一部や収集資料は、『パンダコパンダ』をはじめとするその後のアニメに引き継がれる。
本稿では、「長くつ下のピッピ」(Pippi Långstrump)の名前が「あしながおじさん」(Pappa Långben)に、赤毛・そばかすという容姿が「赤毛のアン」に由来することを導入に、ピッピの足(靴下、靴)、赤毛が表象する社会批判的要素を考察する。
川島隆(プロジェクト人魚/京都大学)「ドイツに《逆輸入》された『アルプスの少女ハイジ』」
高畑勲が演出を手がけたTVアニメ『アルプスの少女ハイジ』(1974)は、ドイツ語吹替版が1977年から翌年にかけてZDF(第二ドイツテレビ)で放送され、大きな人気を博した。これは大規模なメディアミックス展開の最初の成功事例として、ドイツの児童メディア史上でも転換点を画している。海外の児童文学にもとづく日本のアニメ作品が、原作小説が最初に出版された国へと《逆輸入》された例と言えるだろう。ただし、このドイツ語吹替版は、音声面で大きな変更が加えられた結果、いわば別の作品になっている。テーマソングやBGMが作り直されていることに加え、登場人物のセリフの修正やカット、ナレーションへの差し替えなどが行われ、シーンの意味自体が大きく転換させられている例も少なくないのである。とくに、①元の高畑作品では悲しみや衝撃を表現している場面が楽しい場面に変えられている例や、②高畑作品が原作のキリスト教的な要素を保存している箇所で、徹底した脱宗教化が図られている例に注目したい。そうした変更点から、逆に、高畑作品の特性が浮かび上がってくる。
縄田雄二(中央大学)「幻燈劇としてのゲーテ『ファウスト』再考」
アニメーションの源のひとつは幻燈である。本論文では、ゲーテ『ファウスト』と幻燈との関係を再考する。まず言葉で書かれ、次いで上演され、そこに光学機械も投入できる戯曲において、言語と光学機械のそれぞれが、映像といかに関わるか。こうしたメディア論的考察がこの大作の根底にあることを、戯曲の文言において見る。さらに、幻燈が生む幻影と詩の言語との関連を詠じた、朝鮮の文人、申紫霞の詩を分析する。書かれたのは、ゲーテが『ファウスト』第二幕第三場を幻燈劇と銘打って印刷したのと同じ1820年代後半である。『ファウスト』を、地球規模のアニメーション前史という枠で比較文化の手続きにかけ、論を結びたい。
日時:2016年8月20日(土) 15:00~17:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館共同研究室(3)
<お茶の水女子大学紀要 投稿論文発表会>
兼岡理恵「異界との交通―海幸山幸神話を中心に―」
加藤敦子「狐女房に見る異界」
中丸禎子「バレエを踊る人魚姫――「爪先立ち」があらわす異界」
田中琢三「シンポジウム総括」
<高畑勲インタビュー掲載予定書編集会議>
出版社・執筆者について
(司会:中丸禎子)
<日時>2015年9月1日(火) 14:00~
<場所>東京理科大学神楽坂キャンパス2号館2階221教室
<プログラム>
13:30 開場
14:00 開会挨拶・趣旨説明:中丸禎子(東京理科大学)
第一部・第二部司会:田中琢三(お茶の水女子大学)
【第一部】 14:05~15:00
口頭発表①
発表者:中丸禎子(東京理科大学)
「赤毛と靴とストッキング 『長くつ下のピッピ』と<世界の名作>」
口頭発表②
発表者:西岡亜紀(立命館大学)
「個を持った少女の憂愁―『かぐや姫の物語』『おもひでぽろぽろ』など」
15:00~15:30 休憩・展示解説(日本ハイジ児童文学研究会)
【第二部】 15:30~18:00
15:30~16:50 高畑勲さんへのインタビュー
インタビュアー:加藤敦子(都留文科大学)・兼岡理恵(千葉大学)
16:50~17:10 コメントペーパー記入・回収+休憩
17:10~17:50 ディスカッション
18:00 閉会挨拶:ちばかおり
【展示】13:30~18:00
日本ハイジ児童文学研究会「高畑勲の「ハイジ」とその前・後」
<新聞・雑誌での紹介>
・日本経済新聞2015年9月11日朝刊「文化往来 高畑勲監督、創作と日本アニメを語る」(リンク先:有料会員限定)
・東京新聞2015年9月24日朝刊第7面「文化 高畑勲さんシンポ 自身の表現を語る」
・兼岡理恵「プロジェクト人魚・日本ハイジ児童文学研究会主催・シンポジウム「高畑勲の〈世界〉と〈日本〉」(『リポート笠間』59号、2015年11月、104-106頁)
日時:2015年8月23日(日) 10:00~16:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
日本ハイジ児童文学研究会より、大谷泰三氏をアドバイザーとして迎え、9月1日シンポジウムの準備を行った。
インタビュー打ち合わせ:アドバイザー:大谷泰三
シンポジウム打ち合わせ
司会:田中琢三
日時:2015年8月3日(月) 15:30~20:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
日本ハイジ児童文学研究会より、ちばかおり氏を講師として迎え、9月1日シンポジウムの準備を行った。
プレ発表①:中丸禎子「赤毛と靴とストッキング 『長くつ下のピッピ』と<世界の名作>」
プレ発表②:西岡亜紀「個を持った少女の憂愁―」『かぐや姫の物語』『おもひでぽろぽろ』など」
レクチャー(招待):ちばかおり「高畑勲の仕事」(仮)
シンポジウム打ち合わせ
司会:田中琢三
日時:2015年3月16日(月) 17:30~19:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
ジャン=ミシェル・ヴィスメール氏、井上征剛氏(山梨英和大学)を招聘し、2本の口頭発表を行った。
発表① Seigo INOUE:“Fantasy for Orchestra - The Little Mermaid” - Zemlinsky - Unfolding from the “Symphony of Death” to the portrayal of the pain of living
発表②
Teiko NAKAMARU:Metamorphosis of the Little Mermaid.
How the mermaids in the European tradition became The Little Mermaid by Hans Christian Andersen
司会:川島隆
日時:2015年3月15日(日) 14:30~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 3号館 333教室
日本ハイジ児童文学研究会とのコラボレーション企画として、一般公開の国際シンポジウムを開催した。
趣旨:
児童文学の古典『ハイジ』をテーマとする国際シンポジウム、第二回となる今回は、フランス語で書かれた最初の本格的な『ハイジ』論の著者ヴィスメール氏と、最新の『ハイジ』日本語訳を世に出した若松氏をゲストに招き、「アルプスの少女」の物語が洋の東西でどのように姿を変えてきたかを考えます。
開会挨拶・司会進行:中丸禎子(東京理科大学)
パネル講演①:ジャン=ミシェル・ ヴィスメール(作家)「クララが立った~牛が運んだ奇跡~」
パネル講演②:川島 隆(京都大学)「アニメ吹替版の東西比較」
パネル講演③:若松 宣子(中央大学)「絵本になったハイジ」
※講演は英語(通訳あり)と日本語で行われます。
日時:2014年12月13日(土) 14:00~16:00
場所:日本フラワーデザイン専門学校
日本児童文学学会とのコラボレーション企画として、プロジェクト人魚メンバーによる2本の口頭発表が一般公開で行われた。
発表者:川島隆
タイトル:ヨハンナ・シュピーリ『ハイジ』の宗教性
<発表要旨>
スイスの児童文学作家ヨハンナ・シュピーリの小説二部作『ハイジ』(1880/1881)は、きわめてキリスト教色の強い作品であると一般に理解されている。しかし、その宗教性の内実が何であるかを見て取るのは必ずしも簡単ではなく、従来の研究においても意見の一致を見ていない。本発表では、シュピーリと敬虔主義(プロテスタントの改革運動)の思想との関わりに特に注目しながら、宗教文学としての『ハイジ』の特徴を捉え直すことを試みる。
発表者:中丸禎子
タイトル:『ニルスのふしぎな旅』におけるスウェーデンの近代化とセルマ・ラーゲルレーヴの国家観
<発表要旨>
セルマ・ラーゲルレーヴは、スウェーデン人として初めてノーベル文学賞を受賞した「国民作家」であり、代表作『ニルスのふしぎな旅』(1906/1907)は小学校低学年向けの読本として執筆された「国民文学」である。本発表では、スウェーデンの近代化および近代国民国家成立の過程で、ラーゲルレーヴが「国民作家」として果たした役割と彼女の国家観を、『ニルスのふしぎな旅』の内容・表現および成立の経緯を軸に考察する。
司会:佐藤宗子(千葉大学)
日時:2014年3月27日(木) 14:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館3階 831教室
日本ハイジ児童文学研究会・科研費若手研究(B)ドイツ語圏における国民意識とジェンダーの形成についての研究 と共同・一般公開で国際シンポジウム「ヨハンナ・シュピーリと『ハイジ』の世界」を開催した。
<プログラム>
14:00 開場
14 :30 開会あいさつ、シンポジウムの趣旨 司会:川島 隆(京都大学)
14 :45 発表①
発表者:ペーター・ビュトナー(北京航空天大学)
発表タイトル:ヨハンナ・シュピーリの初期作品をめぐって
15:30 発表②
発表者:アルフレート・メッサーリ(チューリヒ大学)
発表タイトル:「郷愁」の社会史とシュピーリの『ハイジ』
16 :15 休憩
16 :30 発表③
発表者:西岡 亜紀(東京経済大学)
発表タイトル:スタジオブリの出発点としてアニメ『アルプスの少女ハイジ』
17:00 ディスカッション
日時:2016年7月2日(土) 13:00~18:00
場所:お茶の水女子大学 本館306号室
【プログラム】
挨拶:猪崎 弥生(お茶の水女子大学副学長)
趣旨説明・司会:田中 琢三(お茶の水女子大学)
<講 演>
篠田 知和基(甲南大学人間科学研究所客員研究員)「メリュジーヌ伝承から異類婚説話へ」
<研究発表>
兼岡 理恵(千葉大学)「異界との交通―海幸山幸神話を中心に―」
高 永爛(韓国・高麗大学校)「韓国文学における異界との交流譚―ドゥドゥリを中心に―」
加藤 敦子(都留文科大学)「狐女房に見る異界」
中丸 禎子(東京理科大学)「バレエを踊る人魚姫―「爪先立ち」があらわす異界―」
<パネルディスカッション> 司会:田中 琢三(お茶の水女子大学)
3日(日)プログラムを含む詳しい情報はこちら。
日時:2016年4月2日(土) 15:30~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
一般公開シンポジウム「異界との交流」(2016年7月2日(土)、お茶の水女子大学で開催予定)に関する打ち合わせを行った。
司会:田中琢三
日時:2015年12月6日(日) 15:30~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
今後の研究会、論文集に関する打ち合わせを行った。
司会:田中琢三
日時:2014年10月12日(日) 11:00~13:30
場所:京都府立大学 稲盛記念館
教養教育に関する実践報告と日本独文学会員との質疑応答が行われた。
発表者:中丸禎子・川島隆・田中琢三
タイトル:「人魚」文学を扱う授業の実践報告―多言語文学間の共同研究と教養教育への還元モデル」
<発表要旨>
発表者3名は他4名とともに、各言語の研究者による超領域的研究および専門研究の教養教育への直接的な還元を目的に、アンデルセン『人魚姫』を共通テクストとした共同研究プロジェクトを遂行している。
従来の文学研究は、国家・言語によって分節され、研究成果の還元は大学院生など比較的高度な教育対象に限定されることが多かった。これに対して、本プロジェクトでは、『人魚姫』に包含される諸テーマを異なる言語の文学研究者が共有することで、研究を超領域化する。そして、それぞれの研究成果を担当する教養教育の授業に盛り込む。
2014年度前期に、発表者3名は「人魚」もしくは「水の精」を扱いうる教養科目もしくはそれに準じる科目を担当する機会を得た。
1.田中(フランス文学):文系学生対象のヨーロッパ文学講義
2.川島(ドイツ文学):文学部の比較文学講義
3.中丸(北欧文学・ドイツ文学):理系学生対象の教養ゼミ
具体的に扱う作品は、『オデュッセイア』、フケー『ウンディーネ』、アンデルセン『人魚姫』、ジロドゥ『オンディーヌ』などである。教養教育に準じる授業の特色として、各作品の解釈は「作家研究」「比較研究」「文化的背景の研究」「ジェンダー論」など文学研究の方法の例としても提示される。
本発表では、相互の比較を交えながら各授業を報告し、来場者との質疑応答を通じて、教養教育のメソッドの確立を目指す。
日時:2014年9月4日(木) 14:00~18:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 共同研究室(3)
秋草俊一郎の口頭発表が行われた。
発表者:秋草俊一郎
タイトル:「世界文学アンソロジーのなかの日本文学」
日時:2014年8月1日(金) 14:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 共同研究室(3)
日本独文学会秋季研究発表会ブース発表に向けての準備が行われた。
発表者:田中琢三・川島隆・中丸禎子
タイトル:「人魚」文学を扱う授業の実践報告―多言語文学間の共同研究と教養教育への還元モデル」
日時:2013年9月21日(土) 14:30~18:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 共同研究室(2)
中丸禎子の口頭発表と質疑応答が行われた。
<発表要旨>
発表者:中丸禎子
発表タイトル:「アンデルセン『人魚姫』における女性の人魚 デンマークのナショナル・イメージとしての要素」
司会:川島隆
発表者が執筆中の論文について、原稿の読み上げと質疑応答を行った。 アンデルセン『人魚姫』は、ドイツ・ロマン主義をはじめとするドイツ文学との影響関係から、これまで、ドイツ文学研究の分野で、人魚モチーフの作品を文学史的に概観する観点と、人魚をアンデルセンのセクシュアリティの表象とする観点から論じられてきた。これに対し、発表者は、北欧文学研究の立場から、デンマーク文学史、および『人魚姫』が書かれ、受容されるにいたったデンマークの歴史的・社会的状況と、『人魚姫』解釈を符合させることを試みた。
ドイツ文学における『人魚姫』研究は、人魚が女性であることを自明としている。しかし、デンマークおよび北欧の文学においては、女性の人魚と並行して、男性の人魚や水の精も多く書かれてきた。アンデルセン自身、『人魚姫』の前身として、人間の女性と人魚の男性の恋愛を描いた韻文戯曲『アウネーテと人魚』を書いている。この作品は、デンマークの民謡を原作とし、デンマーク啓蒙主義の作家バッゲセンとロマン主義の作家エーレンスレーヤによって詩作化されている。
本発表では、『アウネーテと人魚』から『人魚姫』への改変にあたり、アンデルセンが主人公の性別を変更したことを、セクシュアリティという作家個人の問題に帰すのではなく、ナポレオン戦争敗戦後のデンマークにおけるナショナリズムの高まり、特に、女性の人魚の声をデンマークのナショナル・アイデンティティの表象としたグロントヴィらの言説に着目し、アンデルセンが女性の人魚をナショナル・イメージとして描いたことを主張した。 これに対し、参加者から、デンマーク及び他国の読者によるナショナル・イメージとしての人魚姫像の成立は、『人魚姫』のテクストに描かれた人魚姫像と必ずしも直接関連しないという指摘を受けた。今後は、当論文を『人魚姫』のテクスト内在的な問題を論じるものとして完成させ、別の論文で『人魚姫』およびコペンハーゲンの人魚姫像の受容を論じることとした。
日時:2013年8月7日(火) 14:00~18:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 共同研究室(3)
1.田中琢三の口頭発表と質疑応答、2.本研究会で刊行する論文集に関する話し合いが行われた。
<発表要旨>
発表タイトル:「ドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』について」
発表者:田中琢三
司会:川島隆
発表者は、勤務するお茶の水女子大学において、2013年度前期に「ヨーロッパ言語文化論」という同大学文教育学部言語文化学科の学部1年生向けの科目を担当した。その授業では「文学と音楽」というテーマを設定し、古代から20世紀に至るヨーロッパにおける文学と音楽の関係、特にオペラの歴史を概観しながら文学作品のオペラ化、あるいはオペラ化された文学作品について講義を行った。本発表ではこの授業を踏まえつつ、講義では扱うことができなかったドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』(1901年初演)を取り上げ、実際にDVDで映像を見ながら、この作品におけるアンデルセンの『人魚姫』あるいはフーケの『ウンディーネ』の影響について検討した。さらにドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』(1902年初演)も紹介して、「オペラにおける水の精」という研究テーマの可能性について考察した。
日時:2013年3月15日(金) 14:30~18:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 共同研究室(3)
兼岡の口頭発表と質疑応答が行われた。
<発表要旨>
発表タイトル:風土記受容史―風土記からひもとく土地へのまなざし―
発表者:兼岡理恵
司会:中丸禎子
風土記とは、和銅6年(713)に出された官命によって、日本各地で編纂された報告書である(今年(2013)年は、撰進詔1300年の記念すべき年である)。しかしまとまった形で現存するのは、常陸・播磨・出雲・豊後・肥前の5ヶ国のみ、さらにいずれも完本ではない。このような状況から風土記は、古事記・日本書紀・万葉集など同時代の文献に比し、研究が立ち後れている。
けれども曲がりなりにも現在、風土記が存在するのは、編纂以来、人々が何らかの関心を風土記に寄せてきたからである。そこで風土記受容の時代的変遷を解明することで、風土記とはいかなる文献として捉えられるか、また各時代における「土地」に対するまなざしを探っていきたい。
日時:2013年1月19日(土) 14:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 共同研究室(3)
川島・中丸による共同発表と質疑応答が行われた。
<発表要旨>
発表タイトル:足/脚とジェンダー キース「起きて、床を担いで歩け」を考える」
発表者:川島隆・中丸禎子
司会:中丸禎子
本発表では、まず、Lois Keith: Take Up Thy Bed and Walk: Death, Disability and Cure in Classic Fiction for Girls. Routledge (New York) 2001 (邦訳;ロイス・キース『クララは歩かなくてはいけないの?少女小説にみる死と障害と治癒』藤田真利子訳、明石書店、2003年)の内容紹介を行った。次いで、キースが問題提起した、ジェンダーと身体障害・病を扱った少女小説(およびそれに類する作品)の例として、川島が、スイスのドイツ語作家シュピーリの『ハイジ』(1880/81)および『ジーナ』(1884)、中丸が、スウェーデンの作家ラーゲルレーヴの『エルサレム』(1901/02)、「あるサガのサガ」(1912)、『モールバッカ』(1922)を紹介した。 キースへの批判を交えつつ、例として挙げた作品に関して討議を行う中で、ゾラとシュピーリ、ジョルジュ・サンドとラーゲルレーヴの同時代性・類似性が確認された。
日時:2012年9月29日(土) 14:00~19:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 8号館 843教室
1.当研究会の正式名称の協議。正式名称は「プロジェクト人魚」に決定した、2.パラケルスス『精霊の書』の読書報告、3.加藤敦子の口頭発表と質疑応答
<発表要旨>
発表タイトル:近世演劇の異類婚姻譚と異人像
発表者:加藤敦子
司会:川島隆
本発表では、アンデルセン『人魚姫』から人魚と人間の結婚、異類・異人としての人魚というテーマを選び、同類のテーマと見ることができる(1)異類婚姻譚と(2)異人像について日本近世演劇(歌舞伎・人形浄瑠璃)における様相を報告した。(1)異類婚姻譚: 稲田浩二による説話の分類で「異類女房」に属する「狐女房(信田妻)」と「木霊女房」を取り上げた。前者は人形浄瑠璃『蘆屋道満大内鑑』(1734初演)に、後者は人形浄瑠璃『三十三間堂棟木由来』(1760初演)に取り込まれた。前者は狐、後者は柳の精が人間の女性の姿となって人間男性の妻となり、男子をもうけるが、結局は子供を置いて去っていく。どちらも作品の中心は母と子の別れにあるが、母なき後に残された男子が家を継承するという物語の構造に江戸時代の規範が反映されている。(2)異人像: 南蛮屏風、「万国人物図」(1645刊)、「万国総界図」(1688刊)では、ある程度正確な情報に基づいた江戸時代初期の異国・異人の表象を確認できる。『和漢三才図会』(1712刊)に記される多様な異人の図像は、『保元物語』の源為朝の島渡り、御伽草子「御曹子島渡」(1716~35頃刊)のそれと類似する。島原・天草一揆を題材とした仮名草子『あまくさ物がたり』(1666刊)に描かれる「キリシタン」像は、江戸時代中期以降、異国に縁ある謀反人の記号として歌舞伎・浄瑠璃作品に取り込まれる。キリシタンの表象が異国の謀反人と結びつくところに当時の対外意識の一面が現れている。
日時:2012年7月21日(土) 14:30~18:30
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(2)
当研究会での議論を含めたアンデルセン『人魚姫』の解釈を、パワーポイントを用いての授業に反映する実践例として、口頭発表:田中琢三「文学研究をどのように教えるか ― 教材としてのアンデルセン『人魚姫』―」と質疑応答が行われた。
<発表要旨>
発表タイトル:文学研究をどのように教えるか ― 教材としてのアンデルセン『人魚姫』―
発表者:田中琢三
司会:川島隆
発表者は、お茶の水女子大学で2012年度前期に担当した科目「ヨーロッパ言語文化論」において「幻想文学」をテーマに講義を行い、その授業の中で「幻想文学」の一例としてアンデルセンの童話『人魚姫』を取り上げた。本発表では、実際に講義で使用したパワーポイントのスライドを見ながら、『人魚姫』を題材にしてどのような授業を行なったのかを報告した。「ヨーロッパ言語文化論」は文教育学部・言語文化学科の共通科目であり、おもに2年次に英文、国文、仏文、中文への進学を予定する1年生、つまり将来的に文学研究に関わる可能性が高い学生を対象としている。したがって、この講義では『人魚姫』という豊かな文学性を内包する作品を分析しながら、文学研究の方法を教示することを主眼とした。まず「伝記的な研究」「源泉の研究」「影響関係の研究」「テーマの研究」「社会学的な研究」「物語論」などの研究方法を概説したうえで、アンデルセンの伝記的事実と『人魚姫』のストーリーとの関係(伝記的な研究)、ギリシア神話にさかのぼる「文学における人魚」について(源泉の研究)、『人魚姫』と小川未明の『赤い蝋燭と人魚』の比較(影響関係の研究)、『人魚姫』において「太陽」と「月」が意味するもの(テーマの研究)など、具体的にいくつかの方法を用いて『人魚姫』の分析を実践することによって、学生にはっきりとした文学研究のイメージを掴んでもらうことを目指した。
日時:2012年5月26日(土) 14:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
1.文献紹介(九頭見和夫『日本の「人魚」像』、小黒康正『水の女』)、2.口頭発表:秋草俊一郎「ナボコフと日本文学」が行われた。
<発表要旨>
発表タイトル:ナボコフと日本文学
発表者:秋草俊一郎
司会:川島隆
本発表では、ロシア出身のバイリンガル作家ウラジーミル・ナボコフの日本における需要に焦点をあてた。『ロリータ』がアメリカでベストセラーになったあと、このスキャンダラスな作品は間をおかずに邦訳されたが、1950年代後半当時の文壇の風潮の中では、「猥褻文書か否か」といった目で見られることは避けがたい状況だった。
それに対して、再評価の旗を振ったのが丸谷才一だった。丸谷は自らが拠って立つジョイスなどの欧米モダニズム文学の流れの中で、ナボコフの作品を受容し、その成果を短編「樹影譚」に結実させた。自ら翻訳することはなかったものの、日本におけるナボコフ像の形成を考える上で、丸谷の果たした役割は大きいものだった。
他方で、丸谷とはまったく違う方法で、『ロリータ』のインパクトを自己の中で長年かけて消化し、作品として温めていたのが大江健三郎だった。大江による、自分の方法論である「私小説的なもののなかへのエロスのとりこみ」を用いた『ロリータ』読解の結果が『美しいアナベル・リイ』だった。この作品を精読していくと、ドストエフスキー『悪霊』へのアリュージョンも織り込まれていることがわかり、大江による独創的な先行作品の解釈が興味深い。
かくも日本でのナボコフ受容は長らく『ロリータ』という作品にしばられてきたわけだが、それを打ち破るには、円城塔による「道化師の蝶」のような作品を待たなくてはならなかったと言える。ここで円城は「着想をえること」自体をテーマに、自由にナボコフの伝記的事実や作品から材料をとっている。
日時:2012年3月30日(金) 13:00~19:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス 1号館 共同研究室(3)
1.研究会の運営方法についての議論、2.科研費についての議論、3.中丸の発表に対する質疑応答が行われた。
<発表要旨>
発表タイトル:『人魚姫』の諸テーマ
発表者:中丸禎子
司会:西岡亜紀
アンデルセン(H.C. Andersen, 1805-1875)の『人魚姫』(Den lille Havfrue, 1837)から導き出し得る5つのテーマを提案する。
1.オリエンタリズム
デンマークは、ナポレオン戦争以前、「海上帝国」を形成し、アンデルセンの時代には、エーレンスレーヤー『アラジン』(1805)や、「チボリ公園」設立(1843)の影響により、オリエンタリズムが高まっていた。『人魚姫』にも、王子の黒髪・黒い目、レモンとオレンジ、女奴隷、花火などのオリエンタル・モチーフが登場する。
2.人魚
「人魚」とその類似モチーフは、地域的な広がりを持つ本会の主要テーマとなりうる。類似モチーフには、セイレーンなど「美しい声で人間の男性を誘い、水死させる魔物」、メリュジーヌなど「異類婚(男性の愛を得ることで魂を得る)」、八百比丘尼など「不死・長寿」、鬼女ものの「鱗と悲恋」、オフィーリアなど「水死した女」が挙げられる。
3.自然
海、空気、太陽などの自然モチーフを提示し、特に、「太陽」に着目する。『人魚姫』には、「太陽に憧れながら、結局は手に入れることができない」という北欧文学に頻出する筋がある。通常は真実や正義の象徴とされる太陽は、『人魚姫』では、見る者を眩惑し、真実を覆い隠す虚構の象徴であり、太陽の下、人魚姫と王子はどちらも、「相手そのもの」ではなく、「別の者に似た者としての相手」を求める。
4.身体
声、脚、髪の毛、血などの身体表現、とりわけ「脚」に着目する。近代の少女小説において、脚部麻痺・脚部障碍は、女性の家への隷従の比喩として書かれてきた。また、ヨーロッパには伝統的に、「山羊脚の悪魔」や「杖を突いた魔女」など、豊穣や生殖をつかさどる神に由来し、キリスト教モラルを逸脱する脚部障碍者像がある。『人魚姫』における脚の獲得を両者のヴァリエーションとして読んでみたい。
5.受容
アンデルセン、デンマーク、および北欧には、総じて牧歌的・理想的なキリスト教国というステレオタイプ・イメージがある。その理由として、(児童書としての)翻訳の問題を提起したい。『人魚姫』の原文と各国語訳を比較すると、原文だけに、「成人女性」を意味する語が使われている。
日時:2011年12月17日(土) 14:00~18:00
場所:東京理科大学神楽坂キャンパス1号館 共同研究室(2)
1.自己紹介、2.2012年秋の応募に向けた科研費についての議論、3.西岡と中丸の口頭発表が行われた。
・西岡亜紀「日本における『人魚姫』の展開」
・中丸禎子「アンデルセン『人魚姫』の諸テーマ」