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東京理科大学理学部第一部教養学科 中丸研究室

〒162-8601 東京都新宿区神楽坂1-3 Tel:03-5228-8160(研究室直通) Email:nakamart〔at〕rs.tus.ac.jp 〔at〕を@にかえてお送りください

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Home > トピックス > プロジェクト人魚第41回研究会(オンライン/公開)

プロジェクト人魚 一般公開研究会

プロジェクト人魚第41回研究会
下記の通り、第41回プロジェクト人魚研究会をZoom・一般公開で開催します。
参加ご希望の方は、このご案内下のフォームよりお申し込みください。
日時
2020年11月25日(水)13:00〜16:00 
発表者・発表タイトル
中丸禎子「香川鉄蔵とイシガオサム 無教会の北欧受容」※11月24日付でタイトルと発表要旨を変更しました。元のタイトルと要旨は、このページの末尾に記載しました。
開催形態
Zoomによる遠隔研究会
プログラム
  12:50〜 Zoom接続開始​
  13:00〜 ご挨拶・趣旨説明
  13:05〜 口頭発表 
  14:00〜 ディスカッション
発表者プロフィール 
プロジェクトメンバーをご覧ください。
発表要旨
 本発表は、スウェーデンの作家セルマ・ラーゲルレーヴの日本における受容分析を通じて、「幸せな北欧」イメージの日本近代史における位置づけを考察する研究の一環である。ラーゲルレーヴは、明治期以降、日独交流の進展の中でドイツにおける人気作家として日本に紹介され、ファシズム期には、日本では「平和主義作家」、ドイツでは「ナチの御用作家」という対照的な受容のされ方をした。わたしの関心は、一見正反対のように見える日独の受容のあり方は、実は、同じ根を持つのではないか、ということにある。ナチの思想的根拠となった「血と大地」や、その前身である「郷土芸術」は、「一つの土地に定住して子孫を残す健康な農民」を称賛し、その定義から外れるユダヤ人、ロマ、遺伝性と見なされる疾患を持つ者、同性愛者等を排除した。自然や農業の称賛、健康への執着、北欧の理想化は、ファシズム批判をする人々にも共通し、戦後も社会福祉やエコロジー思想、そして「幸せな北欧」像といった形で存続している。本研究は、日独のラーゲルレーヴ受容の比較、および、ラーゲルレーヴのスウェーデン語テクストの分析を通じて、「幸せな北欧」イメージのナチズムとの結びつきと、ナチ的な思想の広範性、現代にいたるまでの連続性を問うものである。 「香川鉄蔵とイシガオサム 無教会の北欧受容」では、上記のような関心に基づいて、明治・大正・昭和期のキリスト教による北欧受容、特に香川鉄蔵とイシガオサムのラーゲルレーヴ受容に着目する。 第一に、内村鑑三「デンマルク国の話」(1911)の「郷土芸術」「血と土」との類似と相違を検討し、内村周辺の人々のデンマークの酪農および教育への関心を指摘する。「デンマルク国の話」は、「理想の農業国デンマーク」のイメージを確立し、戦後は、教科書への掲載や岩波文庫への収録を通じて、そのイメージの展開・存続に寄与した。ここでは、内村と「郷土芸術」「血と土」を媒介した可能性を持つ一人として、ヴィルヘルム・グンデルトに言及する。グンデルトは、内村に共鳴し、『余は如何にして基督信徒となりし乎』をドイツ語訳し、1906年に来日した宗教学者である。ドイツ語教師として教鞭をとりながら日本の思想・宗教を研究し、ハンブルク大学日本学科教授や日独文化協会主事として日独交流に努めたが、戦後、ナチ協力のため公職追放された。 第二に、無教会に影響を受けた翻訳者によるラーゲルレーヴ受容を検討する。グンデルトの教え子で、内村の今井館に通った経験もある香川鉄蔵は、グンデルトからラーゲルレーヴ『キリスト伝説集』の翻訳を贈られたことでラーゲルレーヴを知り、その翻訳・紹介をライフワークとした。イシガオサムは、内村、矢内原忠雄、賀川豊彦らの影響のもと、反戦平和主義活動の一環としてラーゲルレーヴを翻訳した。
【変更前のタイトル・発表要旨】
「内村鑑三とヴィルヘルム・グンデルト 明治・大正期の北欧受容」
 1911年、内村鑑三は、「デンマルク国の話 信仰と樹木を以て国を救ひし話」と題する講演を行った(同年、『聖書之研究』136号に所収)。内村が不敬事件の当事者であったことからも、この逸話は現在も、日本の軍国主義に反対する良心的な態度を示すものとして好意的に受け取られることが多い。また、それに付随して、本講演に見られるエコロジー思想や、舞台となったデンマークも理想化される傾向にある。
 しかし、「デンマルク国の話」には、ナチズムの思想的根拠となった「血と土」思想との類似点が多く見られる。また、ドイツの宗教学者ヴィルヘルム・グンデルトは、内村に共鳴して来日し、ドイツ語教師として教鞭をとりながら日本の思想・宗教を研究し、ハンブルク大学の日本学科教授や日独文化協会主事として日独交流に努めたが、戦後、ナチ協力のため公職追放された。
 本発表では、グンデルトの内村論を参照しながら、「デンマルク国の話」の、日本におけるファシズム思想受容としての側面を考察する。
 ※本発表は北ヨーロッパ学会2020年度研究大会口頭発表をベースにしたものである。
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