本研究室では,生命的な振る舞いがどのような物理法則から生まれるのかを理解することを目標に研究を行っています.私たちはこの研究分野を Artificial Life Physics(人工生命物理) と呼んでいます.

自己組織化,集団運動,パターン形成など,生命に見られる多くの現象は,エネルギーと物質の流れによって駆動される 非平衡物理現象 として捉えることができます.

特に本研究室では,メソスケール界面(100 nm〜1 mm) に注目しています.界面は輸送,不安定性,集団ダイナミクスが結びつく低次元の場であり,生命的な構造や運動が生まれる舞台となります.

私たちは,モデル実験系の構築,数値シミュレーション,数理モデル化を組み合わせることで,複雑な現象の背後にあるシンプルで普遍的な物理を明らかにすることを目指しています.

研究対象は,界面輸送,レオロジー誘起パターン,粒子集団運動,アクティブマター,粉体など多岐にわたりますが,これらはすべて「メソスケール界面における非平衡自己組織化」という共通の視点でつながっています.

以下では,住野研究室に行っている研究の代表的な具体例を紹介します

界面駆動コロイド粒子

水相中に分散したコロイド粒子に電場を与える,あるいは粒子自体が周囲の溶質の化学反応を活性化させるなどすると,粒子周辺に非平衡の流動が生まれる事があります.こうした界面駆動のコロイド粒子に関して設計と運動の制御を行うことで、生命現象の模倣や工学応用を目指しています.

アクティブマター

細胞内環境・生物集団・社会など生き生きとした系を考えて見ましょう.これらは自ら動くものを集合させた系です.このような対象を単純化と統計力学の発想を援用し集団としてのマクロの振る舞いに着目することで理解を進めようという物理学がアクティブマターの物理学です.特に集団運動の設計・制御が出来ることから工学的応用も期待できます.

粘弾性流体のフィンガリング

レオロジーが接触線近傍で強調されるひずみ速度の特異性と結びつくことで,界面不安定性が生じうることを発見しました.このような界面不安定性は外部からの一定のひずみ印加で生じることが興味深いところです.このような不安定性の背景を中間漸近解などを利用して理解していきます.

反応注入系

化学反応による流体のレオロジー変化と注入が結合することで特異的な界面運動が生まれます.具体例としては細胞の仮足進展やマクロには地盤改良工事の注入溶液の進展様相が含まれます.化学反応には特有の時間スケールが存在するため,注入過程に埋め込まれた時空間スケールを導入することで空間構造の制御が可能となると考えています.

水性2相分離系

高分子と塩、あるいは2種の高分子が混合した水系では溶媒がともに水により構成される水性2相分離系が構築でき出ます。このような系は、溶媒の大規模なfluxが生まれうるため、強い界面流が生じます。こうした水性2相分離系を人工生命のモデル系として利用し研究しています。

粉体

砂やトナー粒子,コーヒー豆などに代表される粉体は,熱揺らぎがその重心運動に影響を及ぼさないマクロな粒子多体系である. 砂時計の中の砂の様子を思い浮かべると,表面の砂はサラサラと流体のように流るが,底の砂は固体のように静止したままである. このように,粉体通常の固体や流体とは異なる挙動を示す.我々は特に粉体の力学的な特性や粉体の作るパターン形成現象などに着目して研究しています.

ジャミング転移

粉体や,コロイド分散系,泡などはその充填率が高いと粒子同士が接触し剛性を伴い固体的に振る舞う.   一方,密度が低い場合は粒子の接触がなくなり粒子が自由に動くことができ流体的に振る舞う.この固体と流体の転移はジャミング転移と呼ばれる. 我々は,特にジャミング転移点近傍の物理量の臨界性などに着目し,数値計算・理論解析を用いた研究を行っています.

液晶系

液晶とは異方性を持つ分子からなる集合体で,並進対称性を維持したまま空間の回転対称性を失った状態,ネマチック状態など様々な中間的秩序構造を取ります.このような液晶の生成するメソ構造に関して,構造の特徴やその遷移ダイナミクスを解き明かす研究をしています.

巨大ユニラメラベシクル(GUV)

リン脂質や混合界面活性剤系を利用する事で細胞と洞スケールの10 µm程度の巨大なベシクル(GUV)を生成する事が出来ます.このようなGUVを電場などにより外部より駆動すること,あるいは内部に人工的な細胞骨格を導入することで運動を生起することを目指して研究しています.


研究室に入る学生が学んでおくこと

物理学:力学・熱統計力学・量子力学他

住野研究室で研究を行う際は,多様な系に関して基礎知識を身につけることが必要です.しかしながら.これらの知見は実際の研究を行いながら教科書をベースに学ぶことで吸収できます.それよりも学部時代には,基礎的な物理学をしっかりと身につけること,特に演習問題もさることながらそれぞれの物理学の概念に関して様々な教科書を熟読し身体性を持って身につけることが大事です.

言語:外国語・数学・計算機言語

語学は自らの持つ世界を拡張してくれます.語学を身につけることは,それぞれの言語が用いられている領域での文化を学ぶことにもつながります.英語(外国語)・数学・計算機言語と一見,それぞれ異なる領域に感じられるかもしれませんが,繰り返しの訓練が実を結ぶことや,世界を広げてくれること,一朝一夕で身につかないことが共通しています.それぞれの文化を身につけることを意識して継続的に学習してください.