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東京理科大学総合研究院「幾何学と様々な自然現象の解析懇談会」主催
ワークショップ「離散幾何学~理論から物質を探求する~」
日時:2024年3月2日(土)9:45 - 17:05
ハイフレックス開催(対面とZoomの併用)
対面会場:東京理科大学神楽坂キャンパス 11号館 11-1教室
講演予定者(敬称略、五十音順)
- 梶ヶ谷 徹 (東京理科大学)
- 加須栄 篤 (金沢大学)
- 内藤 久資 (名古屋大学)
- 橋本 幸士 (京都大学)
- 安本 真士 (徳島大学)
プログラム
- 9:45~10:45 梶ヶ谷 徹 (東京理科大学)
- 11:00~12:00 安本 真士 (徳島大学)
- 13:45~14:45 橋本 幸士 (京都大学)
- 14:55~15:55 加須栄 篤 (金沢大学)
- 16:05~17:05 内藤 久資 (名古屋大学)
タイトル・アブストラクト
- 梶ヶ谷 徹 (東京理科大学)「有限グラフ上の変分問題」[講演スライド(PDF)]
曲面の三角形分割や高次元空間の中のネットワークと言ったものを実現する有限グラフからリーマン多様体への写像に対し、「良い」実現の仕方を幾何学的な変分問題の観点から考察する。
長さ汎函数やエネルギー汎函数の停留点として得られるグラフの実現は、閉測地線の拡張と見なすことができ、微分幾何学的な手法を用いて、停留点の存在、安定性、曲面上の標準実現、具体的および数値的な構成法など既に様々な研究がある。
本講演では、安定性や標準実現に関する講演者の最近の結果を中心に、関連する研究や課題などを紹介したい。
- 加須栄 篤 (金沢大学)「重み付き無限グラフの倉持コンパクト化とモスコ収束」[講演スライド(PDF)]
重み付き無限連結グラフと、その上のディリクレ和が有限な関数からなるヒルベルト空間に付随した倉持コンパクト化を考える。このヒルベルト空間上のブーリンク-デニ条件を満たす閉形式で、ディリクレ閉拡大、ノイマン閉拡大、あるいはその中間にあるものを考察の対象とする。これらの閉形式は、部分グラフ上に同様の条件を満たす閉形式を誘導し、また倉持境界に広い意味でのディリクレ形式を誘導する。ただし倉持境界には調和測度による二乗可積分関数なるヒルベルト空間を考えている。この講演では、誘導形式を備えた部分有限グラフの列の(桑江‐塩谷(2003)の意味による)モスコ収束に関する結果および関連した研究を紹介する。
- 内藤 久資 (名古屋大学)「離散幾何解析と材料科学」
離散幾何解析とはグラフの幾何学的性質を用いた解析であり,
分子軌道法や結晶構造の強結合近似など, 物性科学においてもグラフ理論を用いた議論が広く用いられている.
また, グラフ理論と変分原理を利用して結晶構造の記述を与えた Kotani-Sunada による位相的結晶の標準実現は,
従来とは異なる結晶構造研究への新しいアプローチとして注目を集めている.
本講演では, フラーレン・カーボンナノチューブなどの sp^2 炭素構造モデルとした3分岐離散曲面の幾何学や,
結晶格子の標準実現を利用した負曲率 sp^2 炭素構造の構成,
および, それらの材料科学への応用など最新の結果を含めて紹介する.
- 橋本 幸士 (京都大学)「ニューラルネットワークの対称性の統一:トランスフォーマー、フィードフォワード、ニューラルODE」[講演スライド(PDF)]
トランスフォーマーを含むニューラルネットの内部構造を理解することは、機械学習における最も困難な課題の一つである。本研究では、物理学における重要な概念であるゲージ対称性の原理をニューラルネットワークアーキテクチャに適用することで、新しいアプローチを導入する。モデル関数を物理量とみなすことで、様々な機械学習モデルのパラメトリックな冗長性がゲージ対称性として解釈できることを見出す。本講演では、ニューラルODEにおけるパラメトリックな冗長性を数学的に定式化し、そのゲージ対称性が、アインシュタインの重力理論において基本的な役割を果たす一般座標変換不変性によって与えられることを見出す。ニューラルODEをフィードフォワード・ニューラルネットワークの連続体版とみなし、フィードフォワード・ニューラルネットワークのパラメトリックな冗長性が、ニューラルODEの差分同型に実際に持ち込まれることを示す。さらに、我々の解析をトランスフォーマーに拡張し、ニューラルODEとそのゲージ対称性との自然な対応を見出す。ゲージ対称性の概念は、物理学を通して深層学習モデルの複雑な振る舞いに光を当て、様々な機械学習アーキテクチャを分析するための統一的な視点を提供する。本講演は、広野雄士氏、三内顕義氏との共同研究に基づく。https://arxiv.org/abs/2402.02362
- 安本 真士 (徳島大学)「曲面の離散微分幾何の拡がり」[講演スライド(PDF)]
離散微分幾何は主に,通常の微分幾何に現れる構造を保つ離散的
対象の理論を構築する研究領域であり,目的に応じて様々な理論が展開されている.
今回は,微分幾何と可積分系に基づいた離散曲面論,特にミンコフスキー空間内の
離散曲面論に焦点を当てる.ミンコフスキー空間内の離散曲面は,ユークリッド空間
内のそれと同様の性質を持つこともあるが,一方で従来の研究では起こりえない性質
が現れることから,従来の離散曲面論よりも興味深い研究対象である.
本講演ではまず,ミンコフスキー空間内の離散平均曲率零曲面に現れる性質,および
それらの構成法について紹介し,ミンコフスキー空間内の離散曲面の一連の研究を
応用した,ユークリッド空間の離散極小曲面の構成についての研究の進捗状況について
報告する.近年,講演者等によって導出されたミンコフスキー空間内の離散平均曲率
零曲面が,建築幾何学の研究にも現れることがMuellerとPottmannによって発見された.
時間が許せば,周辺の研究についても紹介する.
サポート
- 東京理科大学総合研究院
- 科学研究費補助金・基盤研究(C) No. 23K03100(研究者代表:田中 真紀子)
参加登録はこちらから
※終了しました。
世話人
- 田中 真紀子(創域理工学部数理科学科、代表者)
- 小池 直之(理学部第一部数学科)
- 廣瀬 進(創域理工学部数理科学科)
- 梶ヶ谷 徹(理学部第一部数学科)
- 馬場 蔵人(創域理工学部数理科学科)
ワークショップ後の懇親会
日時:2024年3月2日(土) 18:00 開始
会場:ルッコリーナ飯田橋(公式ウェブサイト[リンク])
参加費:7,500円
東京理科大学総合研究院懇談会「幾何学と様々な自然現象の解析」について
- 設置期間:2022年4月1日~2024年3月31日
- テーマ:幾何学をベースとした理学系諸分野との連携および工学系分野への応用
- メンバー:東京理科大学 理学部第一部・理学部第二部・創域理工学部所属教員 19名
- 東京理科大学総合研究院懇談会は、学内における部局や分野を越えた学際的な研究グループが、研究部門や連携研究プロジェクト等の形成の可能性を探るため、情報交換や研究構想等の検討を行うことを目的として設置されるものです。
- 過去に開催されたワークショップ:2022年度[リンク]・2021年度[リンク]・2020年度[リンク]
管理人:馬場 蔵人 kurando.baba(at)rs.tus.ac.jp