講演者 | 中岡 慎治 氏(北海道大学 大学院先端生命科学研究院) |
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講演題目 | メモリー効果を考慮した感染症数理疫学モデル |
日時 | 令和4年8月3日(水)15:00--17:15 |
場所 | オンライン(Zoom) |
講演概要 [PDF] | 人獣共通感染症は、自然宿主である野生生物からの感染がヒト間で伝播することによって感染が拡大する。自然宿主やワクチン非接種集団が、いわば感染を持続させる感染源としての役割を担っている。個体内のウイルス感染を考えた場合、たとえばヒト免疫不全ウイルス(HIV)による感染が持続する原因として、複数の抗ウイルス薬治療下においてもHIVを保持する細胞(リザバー)が生存・ウイルスを産生することで、慢性的な感染に寄与しているとの報告がある。リザバーが感染維持のメモリーとして果たす役割を数理的に解析することで、様々な感染症動態の理解に活用できると考えられる。メモリー効果を表現する定式化として、ネットワーク構造を考慮した微分方程式系、時間遅れをもつ微分方程式、分数階微分方程式 (fractional differential equation)、再生方程式がしられている。
本講演では、再生方程式をベースにした定式化に着目する。具体例として、コロナウイルス感染症における前臨床診断データの活用、感染→軽症→重症化といった指数分布に従わないイベント遷移を考慮した感染動態の把握など、感染における集団・個体内のメモリー効果を表現できる手段として、再生方程式が有効であることを紹介する。 |