Japanese / English
部分多様体幾何とリー群作用2022
日時:2023年3月27日(月)〜 3月28日(火)
場所:東京理科大学 神楽坂キャンパス 森戸記念館第1フォーラム(B1階)
講演予定者(敬称略、五十音順)
- 赤嶺 新太郎(日本大学)
- 井川 治(京都工芸繊維大学)
- 川村 昌也(香川高等専門学校)
- 清原 悠貴(北海道大学)
- 近藤 慶(岡山大学)
- 佐々木 優(東京工業高等専門学校)
- 杉本 恭司(東京理科大学, D)
- 田丸 博士(大阪公立大学)
- 塚田 和美(お茶の水女子大学名誉教授)
- 馬場 蔵人(東京理科大学)
プログラム
3月27日
- 9:50 - 10:50 清原 悠貴「3 次元ハイゼンベルグ群の時間的極小曲面に対する Sym の公式」[記録集原稿][発表時スライド]
- 11:00 - 12:00 赤嶺 新太郎「Krustの定理の拡張と極小曲面の変形について」[記録集原稿][発表時スライド]
- 13:50 - 14:50 川村 昌也「複素及び概複素多様体上の完全非線形楕円型方程式」[記録集原稿][発表時スライド]
- 15:00 - 16:00 馬場 蔵人「コンパクト対称三対の標準形と二重佐武図形」[記録集原稿][発表時スライド]
- 16:10 - 17:10 井川 治「triality automorphism の場合の$\sigma$-作用の軌道の幾何学」[記録集原稿][発表時スライド]
3月28日
- 9:50 - 10:50 杉本 恭司「パラエルミート対称空間と擬エルミート対称空間の双対性について」[記録集原稿][発表時スライド]
- 11:00 - 12:00 佐々木 優「結合的グラスマン多様体の部分多様体」[記録集原稿][発表時スライド]
- 13:50 - 14:50 近藤 慶「リプシッツ関数に関するレーブの球面定理」[記録集原稿][発表時スライド]
- 15:00 - 16:00 田丸 博士「Lie groups whose moduli spaces of left-invariant Riemannian metrics are one-dimensional」[記録集原稿][発表時スライド]
- 16:10 - 17:10 塚田 和美「Lie 球面幾何学の複素化と実グラスマン多様体の全複素部分多様体」[記録集原稿][発表時スライド]
アブストラクト
- 赤嶺 新太郎「Krustの定理の拡張と極小曲面の変形について」
極小曲面論において「3次元ユークリッド空間内の極小曲面が,ある凸領域上で定義された関数のグラフになっているならば,その同伴族に属する曲面もまた同じ平面上で定義された関数のグラフになる」というKrustの定理は,埋め込まれた極小曲面を大域的に構成する際などに重要な役割を果たす.
本講演では,上記のKrustの定理を同伴族に限らない変形(例えば,Lopez-Ros変形や外空間の変形など)に対して一般化した結果を紹介する.さらに,上記のような曲面のグラフ性は単葉調和関数論と密接に関係していることを紹介し,Krustの定理における凸性を仮定しない場合の結果についても言及する.
本講演の内容は名古屋大学の藤野弘基氏との共同研究に基づく.
参考文献:S. Akamine and H. Fujino, Extension of Krust theorem and deformations of minimal surfaces, Ann. Mat. Pura Appl. (4), 201 (2022), 2583?2601. DOI: 10.1007/s10231-022-01211-z.
- 井川 治「triality automorphism の場合の$\sigma$-作用の軌道の幾何学」
8次特殊直交群の普遍被覆群Spin(8)にはtriality automorphism と呼ばれる位数3の外部自己同型写像 $\sigma$
が存在する.
この$\sigma$から$\sigma$作用と呼ばれる Spin(8)のSpin(8)自身への作用が定まる.
この作用は余等質性(=最大次元軌道の余次元) 2 の超極作用である.
この作用の軌道空間と個々の軌道の性質について報告する.
この研究は間下克哉(法政大学)との共同研究に基づく.
- 川村 昌也「複素及び概複素多様体上の完全非線形楕円型方程式」
完全非線形楕円型方程式は, 複素及び概複素幾何学において重要な方程式を含み, その中にはモンジュ・アンペール方程式やヘッシアン方程式が含まれる.
近年では, グラディエント項を含む完全非線形楕円型方程式に注目が集まっており, 微分幾何学や数理物理学の分野において重要な役割を果たしている.
例えば, カラビ予想の一般化であるゴウデュション予想に対応するモンジュ・アンペール型の方程式はこのグラディエント項を含む方程式に含まれ, また, 弦理論におけるストロミンジャーシステムの高次元における一般化として, フ(J.-X. Fu)とヤウ(S.-T. Yau)によって紹介されたフ・ヤウ方程式がこの方程式に含まれる.
加えて, ミラー対称性により, ラグランジュ部分多様体の存在性と関係していることで知られているdHYM方程式(deformed Hermitian-Yang-Mills方程式)もグラディエント項を含む完全非線形楕円型方程式に含まれる.
本講演では, 完全非線形楕円型方程式の解の存在性を示すプロセスを紹介し, 特に概複素多様体上での新しい計算方法を用いた議論によって得られる結果について述べる.
- 清原 悠貴「3 次元ハイゼンベルグ群の時間的極小曲面に対する Sym の公式」
空間形の平均曲率一定曲面のガウス写像は対称空間への調和写像になっており, Sym の公式と呼ばれる Bonnet 曲面の表現公式によって調和写像の特別なフレームから再現することができる.
一方で, 一般に左不変リーマン計量を備えた 3 次元リー群において, 平均曲率が一定となる曲面とガウス写像の調和性には特別な関係は認められていないが, 3 次元ハイゼンベルグ群では極小曲面のガウス写像が対称空間への調和写像を定めることが知られている.
この事実はある左不変ローレンツ計量でも成立する.
本講演では, 左不変ローレンツ計量を備えた 3 次元ハイゼンベルグ群の時間的極小曲面がド・ジッター球面への調和写像の特別なフレームから再現できることを, 可積分系の観点から説明する.
- 近藤 慶「リプシッツ関数に関するレーブの球面定理」
1952年にG.レーブは次の球面定理を証明した:
定理 $m$次元閉多様体上に滑らかな関数で非退化な臨界点をちょうど2つ持つものが存在すれば、その多様体は$m$次元標準球面に同相である。
J.ミルナー(1959年)とR.ローゼン(1960年)は、レーブの球面定理が非退化性を仮定せずとも成り立つことを独立に証明した。講演者は、薄滑解析(Nonsmooth
Analysis)の立場から滑らかな関数の臨界点の概念をリプシッツ関数へ拡張し、上述のレーブ・ミルナー・ローゼンの球面定理をリプシッツ関数へ一般化した。本講演ではその一般化された球面定理についてお話したい。
- 佐々木 優「結合的グラスマン多様体の部分多様体」
G型対称空間である結合的グラスマン多様体は四元数対称空間の一例である.
最近Enoyoshi-Tsukadaにより,概複素多様体である6次元球面のラグランジュ部分多様体から結合的グラスマン多様体への調和はめ込みが構成された.
本講演では,6次元球面の概複素部分多様体から結合的グラスマン多様体への全複素調和はめ込みの構成を紹介する.
また同様な議論により,3次元CR部分多様体から結合的グラスマン多様体への,概複素はめ込みのアナロジーとしての"CRはめ込み"を構成することができたのでこれも紹介する.
さらに結合的グラスマン多様体において,Enoyoshi-Tsukadaにより極地と呼ばれる全測地的部分多様体がある全複素はめ込みの像になることが示された.
この結果の拡張として,結合的グラスマン多様体において等長変換群のイソトロピー群の作用における多くの軌道が,あるCRはめ込みの像になり,特に全複素はめ込みと似た性質を有することを紹介する.
- 杉本恭司「パラエルミート対称空間と擬エルミート対称空間の双対性について」
不変パラ複素構造と不変パラエルミート計量を兼ね備えた対称空間をパラエルミート対称空間(以下PHSSと略す)という.
また, PHSSの対合的反パラ正則等長変換の固定点集合の連結成分をパラ実形という.
本講演では, 双曲軌道型絶対単純PHSSとそのパラ実形の組全体からなる集合と単純既約擬エルミート対称空間とその実形の組全体からなる集合の間の対応を考えることで, 双曲軌道型絶対単純PHSSと単純既約擬エルミート対称空間の間の双対関係が得られることを述べる.
この双対関係により, 双曲軌道型絶対単純PHSSのパラ実形は単純既約擬エルミート対称空間の実形として実現できること(とその逆が成り立つこと)がわかる.
特に, 対称R空間やその非コンパクト双対もパラ実形として実現できることがわかる.
- 田丸 博士「Lie groups whose moduli spaces of left-invariant Riemannian metrics are one-dimensional」
与えられた Lie 群に対して,
その上の左不変リーマン計量の全体の空間を然るべき同値関係で割った空間を, 左不変リーマン計量の
moduli 空間と呼ぶ.
この moduli 空間の性質 (次元や位相型など) は, Lie 群の不変量であり, 左不変リーマン計量の様相を反映することが期待できる.
例えば, moduli 空間が 0 次元の場合 (一点集合の場合), その Lie 群上の任意の左不変リーマン計量は
Ricci soliton である.
本講演では, moduli 空間が 1 次元となる Lie 群の分類問題について, 現時点で得られている部分を紹介する.
本講演は, 武富雄一郎氏, 川又将大氏との共同研究に基づく.
- 塚田 和美「Lie 球面幾何学の複素化と実グラスマン多様体の全複素部分多様体」
本研究は四元数ケーラー多様体の複素部分多様体論に属するものである.
$n$ 次元実ベクトル空間 $\mathbb{R}^{n}$ の向き付けられた $4$ 次元部分空間全体のなす実グラスマン多様体 ${\rm \widetilde{Gr}}_4 (\mathbb{R}^{n})$ は四元数ケーラー構造をもつことが知られている.
$n$ 次元複素ベクトル空間 $\mathbb{C}^{n}$ の複素 $2$ 次元部分空間で標準的な複素内積を制限したとき零となるもの(等方的部分空間)全体 ${\rm H}_2 (\mathbb{C}^{n})$ は(複素) $2n-7$ 次元複素多様体となり,さらに正則接触構造をもつ.
${\rm H}_2 (\mathbb{C}^{n})$ から ${\rm \widetilde{Gr}}_4 (\mathbb{R}^{n})$ への自然な射影が定義され, ${\rm \widetilde{Gr}}_4 (\mathbb{R}^{n})$ の四元数ケーラー構造に関するツイスターファイブレーションになっている.
${\rm H}_2 (\mathbb{C}^{n})$ を仲立ちにした ${\rm \widetilde{Gr}}_4 (\mathbb{R}^{n})$ の全複素部分多様体とLie 球面幾何学の複素化に相当する幾何学との関係について述べる.
- 馬場 蔵人「コンパクト対称三対の標準形と二重佐武図形」
コンパクト対称三対の分類理論において,松木敏彦氏はコンパクト対称三対に対して非自明な同値関係を導入した。
幾何学的には,二つのコンパクト対称三対が同値であれば,これらから得られるHermann作用は本質的に同じとなる。
しかし,それらHermann作用の扱いやすさには差が生じるため,同値類の中から`良い’構造をもった代表元を選ぶことがHermann作用の詳しい性質を調べることに役に立つと期待される。
本講演ではそのような代表元を`標準形’とよび,その存在と性質について説明する。
また,松木敏彦氏によるコンパクト対称三対の分類の別証明として二重佐武図形の方法について説明する。
この方法は荒木捷朗氏による佐武図形を用いたコンパクト対称対の分類方法の拡張にあたる。
佐武図形から重複度付き制限ルート系が決定できたように,二重佐武図形の方法は制限ルート系の拡張概念である
重複度付き対称三対の決定に応用できる利点がある。
本講演の内容は井川治氏(京都工芸繊維大学)との共同研究に基づく。
世話人:
小池 直之(東京理科大学理学部第一部数学科)
田中 真紀子(東京理科大学理工学部数学科)
馬場 蔵人(東京理科大学理工学部数学科)
サポート:
科学研究費補助金・基盤研究(C) No. 22K03300(研究者代表:小池 直之)
科学研究費補助金・基盤研究(C) No. 19K03478(研究者代表:田中 真紀子)
過去の記録については、下記のサイトをご覧ください。
conf-sgla (tus.ac.jp)
管理人:馬場 蔵人 baba_kurando(at)ma.noda.tus.ac.jp